不倫愛-星空の下で

第1話 隠された感情

京都の古い町並みが、夏の朝日に輝いていた。瑞希はいつものように、自転車で出版社へと向かっていた。

彼女の心は、仕事への情熱と、秘めた感情の間で揺れていた。

出版社に着くと、彼女はいつものように机に向かい、原稿の校正に取り掛かった。

しかし、彼女の心はすでに仕事よりも、上司の翔太に向いていた。彼は部屋の隅のデスクで、集中して作業をしている。

瑞希は、彼の真剣な眼差しと、時折見せる優しい微笑みに心を奪われていた。

翔太は、才能ある編集者で、瑞希が尊敬する存在だった。彼は仕事に対して熱心で、常に革新的なアイデアを持っていた。

彼の妻とは、大学時代からの付き合いで、幸せな家庭を築いているという噂もあった。

ランチタイムになると、瑞希は一人で近くの公園に向かった。ベンチに座りながら、彼女は翔太のことを思い描いていた。

彼に対する感情は、ただの尊敬や憧れを超えていた。

しかし、彼女はその感情に蓋をしていた。

翔太は既婚者であり、彼女がその境界線を越えることは許されないと、自分に言い聞かせていた。

午後になり、瑞希は原稿の校正を終え、新しいプロジェクトのミーティングに参加した。

翔太もそのミーティングに出席しており、彼の鋭い洞察と創造的な意見に、瑞希は再び心を動かされた。

ミーティングが終わり、翔太が彼女に近づいてきた。

「瑞希、今日の校正、よくできていたよ。いつも頼りにしてるよ」と彼は言った。

その一言が、彼女の心を満たした。

しかし同時に、彼女はその感情を隠さなければならないという現実に直面していた。

夕方、瑞希はいつものように自転車で家に帰った。

途中、京都の街並みを眺めながら、彼女は自分の感情とどう向き合うべきかを考えていた。

翔太への感情は、ただの片思いで終わる運命なのだろうか。

それとも、何かが変わる可能性はあるのだろうか。

家に着くと、瑞希は日記に今日の出来事を綴った。

翔太のこと、仕事のこと、そして自分の心の揺れ動く感情。

彼女はその全てを紙に書き出し、少し心が軽くなった気がした。

夜、瑞希は窓から見える星空を眺めながら、深く考え込んだ。

翔太への感情は、彼女にとって甘美でありながら苦い現実でもあった。

彼女は自分の気持ちを抑えるべきか、それとも正直になるべきか、心の中で葛藤していた。

その夜、彼女は夢を見た。翔太と一緒に美しい京都の街を歩いている夢だった。

彼の笑顔、やさしい声、そして二人が共有する小さな冗談。

夢の中で、瑞希は幸せを感じた。

しかし、目覚めたとき、現実の重さが彼女を再び包み込んだ。

翌朝、瑞希はいつもより早く出社した。

彼女は翔太に会う前に、自分の感情を整理する時間が必要だった。

オフィスに着くと、彼女は仕事に没頭しようとしたが、心はなかなか落ち着かなかった。

その日の午後、翔太が彼女のデスクに近づいてきて、「瑞希、今度のプロジェクトのために、一緒に出張に行かないか？」と提案した。

瑞希は驚いたが、すぐに承諾した。彼と二人きりで過ごす時間があるという事実に、彼女の心は複雑な感情で満ち溢れた。

出張の準備をしている間、瑞希は自分の感情をどう扱うべきか、ずっと考えていた。

彼女は翔太に対する自分の気持ちを認めつつも、彼の家庭を尊重する決心を固めた。

彼女は、この出張が自分にとって大きな試練になることを知っていた。

その夜、瑞希は再び星空を眺めた。

星々がきらめく中、彼女は自分の心に正直に生きる決意を固めた。

翔太への感情は隠し続けるべきか、それとも心のままに行動するべきか、その答えはまだ見つかっていなかった。しかし、彼女は自分自身に向き合い、真実を見つけることを決意していた。