第49話 昼餉
「よし。食べるか」
理玄に続いて白琳たちも同様に『いただきます』と手を合わせる。
三人はまず金桂饅頭を手に取った。見た目は薄っすらと黄色く、恐らく金木犀の乾燥小花の粉末を練り込んであるのだろう。できたてほやほやの饅頭は熱く、白琳は両手をあたふたさせながら何とか饅頭を半分に割った。
湯気が立ち昇ると同時に姿を現わしたのは、具だくさんの
口に含み咀嚼すれば、勢いよく肉汁が溢れ出た。更にはほんのりと甘い柔らかな生地と筍の食感が心地よい餡が絶妙に融合しており、筆舌に尽くしがたい旨さを引き立たせている。
白琳はあっという間に旨味の塊を
「美味しい……!」
「そうか。なら良かった」
瞳を輝かせる白琳に、理玄は安堵したように微笑む。
「翡翠殿はどうだ?」
「凄く美味しいです」
夢中になって饅頭を胃の腑に流し込んでいく二人を見て、理玄は満悦した。
三人が数分と経たずに饅頭を完食したところで、次は甘味である金餅を食す。
「まさか、金桂にも
「金餅に似たお菓子?」
「はい。
対して金餅は円形で、薄皮生地の表面には一輪の小花の意匠が緻密に彫られている。銀桂では似たような小花の意匠が複数彫られているので、所々見た目が異なっていた。
「中には白餡がぎっしり詰まっているんですよ」
「なるほど。じゃあ、金餅のなかはどうなっているんだろうな」
わざとらしく口角をあげて、理玄は中身を見てみるよう促す。
白琳が饅頭同様金餅を半分に割ってみると、黒々とした小豆餡がこれまた饅頭以上に金餅の内部を占領していた。
「わあ……!」
よく見ると金木犀の小花も練り込まれており、早速白琳は金餅を口に運ぶ。程よい甘さが口いっぱいに広がり、甘味好きの白琳は思わず「ん~」と頬に手を添えた。
普段は淑やかだが、今は年相応のあどけない表情を浮かべている白琳。新たな一面に目を
昼餉を済ませると、白琳は舌鼓を打った金餅の詰め合わせを美曜たちへのお土産として購入し、再度街中を散策してから宮廷に戻った。
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