静止する時間の中で

 時計が静止する。

 全ての音も止む。

 無音の世界。

 なぜ、時間が止まったのだろう?

 でも、体は動いた。

 なぜだろう?

 時計のボタンを押す。

 何も反応はない。

 喉が乾いた。

 台所に行く。

 水道の蛇口をひねり、コップに水を注ぎ入れる。

 違和感を感じた。

 なぜだろう?

 水を飲み干し、コップを置いた。

 ピンポーン。

 インターフォンが鳴った。

「宅配便でーす」

 え、宅配便?時間が止まっているのになぜ?

 ワケわからん。

 だが、待たせる訳にも行かないので、荷物を受け取りった。

 荷物を開ける。

 時計と乾電池が入っていた。

 まさか。これって!?

 時間の止まっていた時計の電池を見る。

 電池が入っていなかった。

「うそーん」

 別に時が止まった空間にいたわけではなかった。

 時計が止まったのを、ただ、時が止まった空間にいたと勘違いしただけだった。


終わり

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