伝えたい
もう僕の命は、余命幾ばくもない。母さんは否定するけど、自分の身体のことは、自分が一番よく知っているつもりだ。
入院してから、どれくらい経ったのだろう。視力を失ってしまっているから、カレンダーの数字を見ることもかなわない。声も上手くだすことが出来ない。ただ幸いにも、聴覚は無事だったから、音を楽しむことはできる。片耳イヤホンで好きなロックを聴きながら。
そんな僕のところに母さんはいつも来て、話をし、僕の話を聞いてくれた。
動けないから、身体の筋力が落ちて行く。そんなある日、遂に僕の最後の日が訪れる。
母さんはに伝えたい言葉がある。
僕は、必死に言葉を絞り出す。
「あ・り・が・と・う」
終わり
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