(4)
「しかし、みすぼらしい馬だな」
「ああ、認めざるを得んな。見ためだけは、お前たち
「立場を
ボクと草原の為の女の子は、偽王子の捕虜になって、縄で後ろ手に縛られ……ん?
草原の民の女の子は弓矢の
「あ、そうだ、言い忘れたが……その縄は鋼線入りだ」
「なら、気長にやるとするか……」
「お前たちには証人になってもらう。私がこの町を騒がす
「ねえ……出来ると思う」
「嫌な予感しかせんな……」
ボク達を入れ替わるように……怪我をした兵隊達が運ばれていく。
そして……。
「あ……あの……あれを1人でやったの?」
「らしいな……」
銀色だったらしいそいつの毛は……返り血で赤黒く染まっていた。
そいつの
かなりの巨体の銀色の狼男。
「次は……お前か……?」
「そうだ。貴様を倒す者の名は……」
「おい、
銀色の狼男は偽王子の台詞を遮り……。
「ならば、歴史に名を残す英雄に倒された事を知らぬままに死ねッ‼」
偽王子は馬で突進し、柄を無茶苦茶長くして槍みたいな見た目に加工した
あっさり避けられた。
次の瞬間……偽王子の乗ってた馬の前足が2つとも無くなった。
「えっ?」
どおんッ‼
転倒する馬から投げ出される偽王子。
「あ……あいたたた……」
「まだ生きてんのか……見苦しいにも程が有る」
「うわあああ……」
偽王子は、倒れたまま……まぁ、こうなったら立ち上がれなくなる位にクソ重い鎧を着てるせいだけど……槍に加工した
カチン……。
何……この……無茶苦茶固いモノ同士がぶつかったような音は……。
「え……え……えええええッ⁉」
「その武器の事は聞いた事が有る。そいつは……
「え……えええええッ? 聞いてないッ‼ そんなの有るかッ‼」
「マヌケが……」
ドオンッ‼
狼男は……倒れてる偽王子の胸の辺りを踏み付ける。
鎧がひしゃげ……多分、鎧の中身もとんでもない事になってるだろ〜なぁ……。
どう考えても……偽王子は助からない。いや、もう死んでるかも知れない。
そう言や、何て名前だったっけ、あの偽王子。
そして……狼男は両手を広げ……。
「伏せろ、何か……マズい」
草原の民の女の子が叫ぶ。
けど……ボクと草原の民の女の子以外は……立ったまま。
狼男は、踊りか何かみたいに、一回転。
そして……狼男の体から、四方八方に銀色の何かが撒き散らされる。
え……。
そんな……。
偽王子に続いて、偽王子に付いて来てた騎士と歩兵は……。
ドオン……ドオン……ドオン……。
騎士は落馬し……歩兵は倒れ……馬達も次々と……。
「毛を鋼に変える事が出来るのか……」
「じゃ……今のは……」
「毛を鋼に変えて、『天子殺し』の刀を防ぎ……続いて鋼に変えた毛を刃物のように……周囲に放った」
「舐めるな……チビスケ。鋼だと?……俺の毛皮は人間が鍛えた鋼より遥かに頑丈だ」
そう言って、狼男は槍に加工した
「おい……俺は女子供の命は取らない主義でな。とっとと逃げ帰れ」
ブチっ……。
その時、草原の民の女の子を縛っていた鋼線入りの筈の縄が切れた。
「舐めるな……。女だろうと……子供だろうと……私は草原の民の戦士。倒すのは無理でも……ほんの一瞬だけでも……」
「何だ?」
ところが、その時……。
「ま……待て……」
草原の為の女の子の馬が……狼男に突進し……。
けど……狼男の両腕の手首あたりの毛が延び……そして、その延びた毛は刃に変り……。
2頭とも、その刃で一瞬で喉元を切り裂かれ……。
「貴様ッ‼」
草原の民の女の子は駆け出し……そして……。
何故か、倒れ落ちている途中の馬の背に乗り……。
違う。
馬の背を踏み出しにして、更に高く飛び上がり……。
「何の真似……ぐえっ?」
草原の為の女の子を見上げた狼男の口……。
そこに、
狼男の姿になって……人間の2〜3倍ぐらいの幅の口を開けてしまったのが……狼男がやった、たった1つの失敗だったようだ。
ドゴォッ‼
爆発のような音と同時に、冗談みたいな量の血が狼男の口から吹き出して……。
「我が名は
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