少女ABCDEFGHIJK/最果タヒ

 3編の中で「宇宙以前」が一番好きな話だった。

 小さいころに想像してたことをそのまま今にスライドさせて書いてくれたみたいな話だ。

 星を見ることを禁止された国、失われた天文学、光る逆さまの花畑。

 そんなん好きに決まっていますよね。


 最初の方、小説を読んでいるのか詩を読んでいるのかわからないようなふわふわした描写ばかりで、なかなか話の世界の全容が見えず、メルヘンな可愛らしい雰囲気だけがわかるもののどこか不穏……みたいなのがめちゃくちゃ良かった。可愛くて不穏って最強ですか?

 こんなん狙って書いてもきれいにまとまらないと思うんだけど、どこまで狙って書いたんだろうか。


 最果タヒさんの小説を読むのは3冊目。

 最初に読んだ「星か獣になる季節」は重たくまじめな作品。

 次に読んだ「渦森今日子は宇宙に期待しない。」は軽やかにふざけていた感じ。

 この作品は大まじめにふざけてた。主観です。おもしろかった。


 この人の文章って、とにかく、言葉から文章が生まれている感じがする。

 ストーリーや世界の設定というものがある小説ですら、その設定に合わせて書いているのではなく、言葉がつらつらと流れるままに書かれていったような感じ。何よりまず言葉があふれてくる人で、それによって文章を書いているように見える。

 そう書くと言葉が上滑りしているとか、口先手先だけで書いているというような意味に聞こえるけど、全然そうではない。本当にいい意味で、言葉からと思う。

 この人以外ならただちょっと巧みにうまいこと言っただけの言い回しに見える言葉も、すべてに実感や体温を感じてしまう。

 こんなふうに書けたら自由だろうなあと思う。


 世界のぶっ飛び方もそう感じる理由の一つかもしれないな。共感とか得ようとしてない、こちらに寄り添おうとしてない文章。うまいこと言って「わかる」って言われる必要なんて小説にはないので。

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