第174話 もう一つの闘い
レイたちが死霊女王と死闘を繰り広げた後、崩落したダンジョンから冒険者たちに救出されようとしている、その頃。
サンサンプトンの一角で、もう一つの闘いがあった。
遡ること数日前、サンサンプトンに到着したロコロッコの商会の会頭、ザルドルはロコロッコの街で起きた事件の元凶とも言うべき『百騎丸』の販売を行ったライオネル商会の門を叩いていた。
「私は、ロコロッコの商会の会頭であるザルドルだ。アポイントもなく突然訪ねたことは詫びよう。しかし、緊急を要する事態なのだ。ライオネル商会、会頭のライオネル氏に面会を望む!!」
「これはこれはザルドル様。私、秘書のセクレタと申します。現在、ライオネル様は病に伏せっており、お会いできる様な状態ではありません。申し訳ありませんがお引き取りを。」
「ぬ?ライオネル氏が病だと?それは真か?」
「えぇ真実でございます。かれこれ数か月、体調が芳しくない様で療養中で御座います。」
「サンサンプトンには聖女様がおられるが、診てもらっていないのか?」
「えぇライオネル様が『そこまでする必要はない』と意固地になっておりまして、ただ、これまで通りすべての業務は出来かねる様で、現在は我が商会のナンバー4のスネイル様が業務全般をおこなっております。」
「ん?スネイル殿が?なぜ?副会頭のお二人、ニイジャ殿とサンイ殿はどうされたので?」
「ニイジャ様とサンイ様は会頭が病に伏せる前に、それぞれ大きな商談のため東方のペレッペ共和国と西方のセイヨン帝国へ行っておられます。」
「なんと!お二方はおられない状態であったか!それで、スネイル殿が、、、であれば、緊急の案件なのでスネイル殿にお会いしたいのだが?」
「も、申し訳ありません。スネイル様からはアポイントのない人間とは誰とも会わないと会頭代行になられた際にきつく申し付けられておりますので、お繋ぎすることはできません。」
「なぜ?そこまで?では、明日アポイントを取らせていただきたい。」
「も、申し訳ありません。アポイントをお取りすることは出来ないのです。スネイル様はある特定の方としか会わないとおっしゃっていて・・・私にはどうにもできないのです。」
「ぬぅ。困りましたな。なぜ特定の方としかスネイル殿は会わないので?」
「わかりません。ただ、秘書の私がこんなことを、ましてやロコロッコの会頭のザルドル様にお伝えするのはお門違いなのかもしれませんが、ニイジャ様、サンイ様が不在となり直後にライオネル様が病に伏せ、スネイル様が会頭代行を始めた際に急にあの不気味な・・・」
「セクレタ!!キサマ何をしておるっ!持ち場に戻れ!仕事をサボるな!さっさとアレの販売の用意を他の者としろっ!!」
「!!?ス、スネイル様!も、申し訳ありませんっ!すぐに持ち場に戻ります!」
そう、怯えるように言い、セクレタは恐怖を顔に張りつけ走り去っていった。
そして、ザルドルの前に厳めしい顔をしたスネイルが現れた。
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