第8話 人は皆毎日が不満な日である
加能と仲間の溜まり場になっているバー。
一昔前までは一般人も来ていたが、今はすっかり変な奴らばかりになってしまった。一人もまともな客がいない。
「なんか連絡来なくね?あいつらもう特バツのやつを殺せたよな?」
加能の中には特に心配はないが、連絡が来ないことには苛立ちがあった。
始末することくらい簡単なはずだ。ましてや、特バツの中でも弱そうなやつをだ。なのになぜこんなに連絡が遅いのだろうか。
「殺せたに決まっているじゃないですか。だってあんだけの人数でやつをぶっ殺せないなんてことはないですよ」
手下は加能の少しの怒りを感じ取り、慌ててフォローした。キレると加能はなにをするか分からない。
その時、勢いよく入り口のドアが開かれた。
「加能さん!!」
報告をしに来たのだろう。彼の仲間が三人入って来た。
「おお、戻ってきたか。つーかなんで連絡しねえの?」
「あ、いやその、、、」
手下はなにやら汗をかき始め、目だけをキョロキョロと動かしている。
「なんだよ」
加能は何となく、ごくわずかな可能性が頭に浮かんだ。
まさかそんなことはないだろう。
「、、、やられました」
手下の言葉に加能に一瞬の混乱が起こった。
どういうことなのかわからない。今言われたことが信じられなかった。
「やられた?」
思わず聞き返す。
「全員やられたのか?」
「はい。俺ら以外全員」
「武器持たせて人数集めたのにか?」
「はい」
「あの動画のやつをだよな?そいつを殺しに行ったんだよな?」
「はい」
プツン。
完全に何かが切れる音がした。
加能は手下の頭を掴み、テーブルに叩きつけた。
「オラァ!!」
一緒にテーブルも割れてしまう勢いだ。
一瞬、その場に彼を中心に閃光が発された。
「この!アホが!ふざけるな!!武器を集めるのにいくらしたと思ってんだ!!」
何度も何度も壊れたテーブルに叩きつける。
頭はぐちゃっと潰れ、潰れ脳みそが流れ出した。
「たった一人殺せねえのかお前らは!」
血まみれの手と、返り血で汚れた加能の顔が彼の狂気を表している。
「違うんです!アイツめちゃくちゃ強いんすよ!一度に三人仕留めてました!!」
「しかもアイツ、サイコパスの仲間を連れているんです!!正気じゃないっすよ!俺らは何とか逃げたんですが、やられた他の奴らはマジ悲惨で、、、」
"逃げた"という言葉を聞いてさらに加能は怒り狂った。
「なら俺はその百倍以上にひでぇ殺し方をしてやる!!次、何の成果もなく戻ってきたらお前ら全員ブチゴロしてやるからな!!」
「でも今どこにいるかわからなくて、、、。俺たちのことを聞き回っているとは噂で聞いたんすけど、、、」
「だからなんだよ?なんで必死に探さねえんだ?バカしかいないのかこの場所には!!てめえらが突っ立っている間に特バツのやつは逃げているかもしれねえんだぞ!応援を呼んでいる可能性だってある!」
特バツは一応組織だ。下手に一人でも生かしておいたら次は何人も集めて再度挑みにくるだろう。
「複数人呼ばれたら俺らでも苦戦する。特バツは応援をすればすぐに駆けつけてくるはずだ!よほど嫌われているやつじゃねえ限りな」
加能は今回逃したことによる危険性について十分に理解していた。
だが、加能は知らない。サツキは組織では嫌われているためサツキが応援を呼んだとしても本当に来るかは分からない。
よって、応援の心配はいらないのである。
「特バツが行動する前にはやく行動しろ!さっさと見つけねえ限り許さねえぞ!」
何とかしてでも見つけ出し殺す。無理なら仲間も殺す。
加能の頭の中には殺意の言葉で埋め尽くされていた。
「それともテメェらは、特バツがこの場にのこのことバカみてえに来るとでも思ってんのか!!」
加能はバーの入り口を指差しながら怒鳴った。
「こんにちは〜」
ちょうどその時、珍しく"普通っぽい"客が店の中に入って来た。
その客は二人組だ。
「なんかさっきまですごい騒ぎじゃなかった?」
「雰囲気悪い店っすね」
二人が入って来た瞬間あたりは静まり返った。
訪れた客はサツキとツツジだったからだ。
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