第4話 苦手だなって思う人ほど縁を切れないのは何故なのか
「連絡来たんでさっそく来ましたー」
「おかしいよ、、、。さっき話してたばかりなのに、、、。なんで、、、」
サツキは少し恐怖していた。
本当にさっきまで沢城と"ボス"の件について話したばかりなのに、彼女が助っ人と呼んだ少女が秒で来たのが不思議でならない。
「んなこと気にしたらキリないっすよー。んじゃあ、お邪魔しちゃいまーす」
黒いブーツを脱ぎ、ズカズカとサツキの部屋に入って来た少女は壁や天井、床などをキョロキョロと見回した。
「うっわ!この部屋いいじゃないすかー!まるで特殊清掃員が入る孤独死した人の部屋みたいで!」
この少女、名前は千賀咲ツツジ。サツキと同じで学校を辞めて特バツに入った。
こいつを一言で言うなら"ヤバいやつ"だ。
ターゲットの手下、街で絡んできたやつ、迷惑行為をしてきた人、こういった奴らを何かと理由をつけて警告もなしに殺すのだ。
特バツなのにツツジは殺し屋のようである。
ツツジの方がよっぽど人を殺してるので彼女の方を処分するべきだ、と処分を言い渡された時からサツキは思っていた。
「ところで先輩聞いてくださいよー。今日暴漢に襲われそうになって殺したら服に血がついちゃってー。酷くないすか?着替えあったから良かったんすけどね。先輩このコーデ好きでしょ?」
ツツジはお気に入りバンドのロゴが入ったオフショルダーTシャツにチェック柄のスカートと首にはチョーカーを身につけていた。相変わらず彼女が好きなパンク系ファッションだ。
確かにサツキはパンクロックは好きだ。だがパンク系コーデには得体の知れない恐怖を感じてしまうので好きじゃない。おそらくツツジのせいだと思われるが。
「なんで来たんだよ、、、」
「沢城さんにちょうど私が近くにいたから行くように言われちゃいましてねー。先輩が困っているってチャットが来たから急いできたんですよ。近くに偶然いたとかマジで赤い糸で結ばれていません?私達」
「その赤い糸は俺の首を絞めているんだろうな」
「あはは!ウケる!冗談はともかく先輩こそなんでなんにも言わずに引っ越しちゃってんすかぁ?処分だってのは分かりますけどお別れもなしだなんて」
ドサっと部屋に入るなりツツジはソファに座り込んだ。
「何でか教えてあげようか?君が怖いからだよ」
ツツジのサツキに対する異常な執着心というか好意が彼を恐怖させる原因である。
あまり強く言えないサツキも悪いのだが。
「え〜!?そっかな?全然怖くないですよ?むしろ彼女に何も言わないでどっか行っちゃう先輩の方がやばいし怖くないすか?」
「怖くないよ!そもそも君は彼女じゃないじゃん!」
「そんな寂しいこと言わないでくださいよ。先輩のことこんなに好きなのに」
ツツジは少し悲しそうに言った。
「君に好かれるなんていやだよ、、、。君は俺の人生で何度も俺に迷惑をかけてきた」
「え?私何かしました?」
「家に勝手に入った」
「強盗いたので」
「初デートで初カノ殴った」
「そいつ三股してたので」
「俺の友達殺したし」
「先輩のこと殺そうとしてたから」
他にも色々あるのだが100件以上はありそうなのでサツキは言うのはやめておくことにした。
「私は先輩のためを思ってやってるんすよー。先輩を困らせようとかいう悪気なんて全くないんです。先輩のためだったら大人も子供も私の身内も先輩の家族も殺しますよ!」
サツキはツツジの発言にドン引きした。
この少女はもしかするとサイコパスというものなのかもしれない。
「マジで今回は私が必要だと思うんすけどね。だってこんなでかい街でパトロールするなんて正気の沙汰じゃないし。先輩への恩返しだってまだ終わってないですよ」
「どうやら俺は君の面倒を見過ぎたせいで理不尽な罪を背負っていたようだね」
もしくは自分は何か別の形で罪を作ったのかもしれない。じゃないとこんな頭のおかしい少女に付き纏われたりはしないだろう。
きっと前世で自分は女性に酷いことをしたか今世で知らぬうちに人を傷つけていたのだ。
「はあ、、、。まあ、沢城さんからの助っ人ということなら仕方ないかぁ」
「お!ようやく分かってくれましたね!」
分かったと言うか観念したと言うか。
「じゃあ、さっそく何します?カードゲームとか?」
「違うよ。パトロールとボス探し」
「ボス探し?」
「聞いてないの?」
「チャットには助っ人として動けとしか言われなかったんで」
なるほど、どうやら沢城はこの厄介者の扱いは全てサツキに任せる気なのであろう。なんて酷い人なのだろうか。
「じゃあ、教えてあげよう。この街にはどうやらボスと呼ばれる立ち位置のやつがいるらしいんだ」
「そいつを捕まえろと」
「まあね」
「捕まえてどうするんすか?食べるの?」
「俺の処分が取り消される」
「ええ!?じゃあ絶対にやらなきゃダメなやつじゃないですか!」
ソファに寝っ転がっていたツツジはそれを聞いて起き上がった。
「そうだね」
「みんな先輩がいなくて寂しがっているんすよ〜?」
「いや、俺は嫌われているからそれはない。じゃないとビビってる映像流されたり、誹謗中傷混じりのマニュアル渡したりしないよ」
あんなマニュアルはよほど嫌いじゃないと作れない。
「私は先輩のこと好きですよ?モテる要素ありますし」
「はあ?どこがぁ?」
「先輩の強いとことー、強いとことー、強いところ」
「俺は強くないよ。弱いからみんなにからかわれたりしてるんでしょ?俺が嫌われる理由はミスする上に弱いからなんだろうな」
相変わらずサツキは自己評価が低い。
「他にないの?」
「先輩と居ると悪人が臓物飛び出して死んだり、首チョンパされたり、頭が叩き割られて脳みそが流れ出るところ見れるからすきです」
「、、、君ヤバいよ。ホント」
「じゃあ、顔!顔が好きです!」
「もういいよ、、、」
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