第16話 過去

 やばいやばいやばい……来宮ナナ。あいつ一体何なんだ?

 銃が効かないとか、ありえないでしょ?

 だが、自分が部屋を出た後に、誰も続いてこない。

 みんな、ナナにやられちゃったのかよ……。


 望月理人は、今自分の目の前で起こった事が理解出来ない。

 ハッキリしている事は、今あそこに警官にでも踏み込まれたら自分の

身が危ういという事だ。


 何でだよ……せっかくここまで積み上げて来たのに……。


 だが……ピンチは今までも何回もあった。

 僕はその度に、それをかわして、ここまでのし上がったんじゃないか? 

 望月理人。お前は、社会をお前に屈服させるんじゃなかったのか!?

 こんなところでヘタは打てない……来宮ナナ。なんとしても排除しないと……。

 

 非常階段を下り切って、ビルの地下駐車場に飛びだしたリヒトは、目の前の光景を見て、ホッと息をついた。


 ふーっ。これでナナに対抗出来るぞ……。


 

 ◇◇◇



 望月理人は、親の顔を知らない。


 気がついたら、児童福祉施設で暮らしていた。

 福祉施設というと聞こえがいいが、要は孤児院だ。

 キリスト教系の施設で、食事の度に、神に祈りを捧げていたのを覚えている。

 

 幼いころから品行方正で、施設の年下達の面倒見もよく、賢い子だとよく周りから言われた。そして、小学校に入る直前で、里親が決まった。

 優しそうなおじさんとおばさんだった。


 引き取られた郊外の家は、それなりに大きくて綺麗で、自分の部屋も貰え、学習机やランドセル、ベッドなどもそろえてくれた。

 ごはんも、施設とはくらべものにならない位おいしかった。

 自分がいい子にしていたから、神様がご褒美をくれたのだとその時は思った。


 小学校二年生の時だった。

 ある晩、お義父さんとお義母さんが大げんかをしていた。

 そして数日後。お義父さんは、どこかへ行ってしまった。

 

 家の中がすっかり静かになって、寂しくなったのか、お義母さんが理人に、

いっしょに寝ようと言ってきた。

 この家に来てからも、ずっと自分の部屋で一人で寝ていて、他の大人といっしょに寝るのは初めてで、ちょっと気恥ずかしかったが、同時にうれしくもあった。


 これが、おかあさんの匂いなのかな……実際に本当の母の匂いなど嗅いだ事もなかったのだが、これがそうに違いないと確信した。


 お義母さんといっしょに寝る様になって、数日後の真夜中だった。


「理人。起きてる?」

「うん。まだ起きてる……」

「理人。おかあさんの事、好き?」

「うん。大好き。おかあさん、いい匂いする」

「うれしーなー。それじゃ、もっと仲良くなろうね……」


 そう言いながら、お義母さんが僕のパンツに手をいれてきた。


「あは、くすぐったいよ……お義母さんのエッチ!」

「ふふ、理人。じゃあ、もっとくすぐったくしてあげる……」


 そして、僕はお義母さんのおもちゃになった……。


 子供心に、いけない事をしている感覚はあった。

 だが、この人に見捨てられたら、僕はまた施設に逆戻りか? それは嫌だった。

 お義母さんとエッチな事をするのは、ちょっと気持ちいいし、そんなに嫌でもなかった。だから、そのまま僕はお義母さんとの関係を続けた。


 小学五年生になった頃。僕の男性器は、普通の大人と変わらない位になった。

 もう精通もあり、お義母さんはもっともっとと僕に懇願する。

 その頃になると僕は、自分の置かれている状況がほぼ理解出来ていた。

 お義母さんは、もうメスブタにしか見えなくなった。


 しかし僕はまだ子供だ。この家を出るのは得策ではない。

 だからと言って、いつまでもこのままじゃ、どこかで人生破綻するんじゃないか? だが、僕が一人で身を立てるとなると……。

 

 僕は、ある実験を始めた。


 小学校のクラスの同級生で、みんなに好かれている女子がいた。

 僕は、一生懸命に彼女を口説き、ほどなく彼女は僕を受け入れてくれた。

 そして、お義母さんと練習したテクニックを使ってみたら、彼女はもう僕の奴隷だった。何でもいう事を聞いてくれるので、お義母さんとは違った技術も彼女で練習した。


 そして……半年位で別れた。

 嫌という程、彼女の弱みを握っていたので、僕の事が表に出る事はなかった。


 気をよくした僕は、今度は複数の女子を同時に相手してみた。

 そしたら、これもうまくいった。

 僕は、女子を言いなりにする才能があるんじゃないか? 

 身を立てるのに、これを生かさない手はないだろう。


 中学に入って、小平芳野と知り合った。

 金持ちのお嬢様で、手駒にするには最適だ。


 最初はツンツンだったが、処女を奪ってやったら僕の言いなりになった。

 そして、付き合って気付いたが、こいつ、かなりのドSだ。

 いじめっ子の才能があふれている様に見えた。

 これで何かうまい事商売出来ないかな……。


 小学校で付き合ってた奴が、違う中学なのにしつこく絡んできて、鬱陶しかったので、あるきっかけで知り合った半グレのお兄さんに売り飛ばした事があり、それであのアルバイトを思いついた。


 効果はてきめんだった。


 芳野は、相手を追い込むのに長けており、僕が目を付けた女子をことごとく追い込んだ。そしてその度に、芳野にはご褒美を与え、追い込まれた女子には僕がアルバイトを勧めた。

 売り先は、半グレのお兄さんが見つけてきてくれた。

 JCは高く売れるんだと言っていた。


 そして、中三の夏休みが終わった頃。半グレのお兄さんが、怖い顔のオジサンたちを連れて来た。オジサンたちは僕の才能を買っていると言って認めてくれた。

 そして、高校に行ったら、もっと手広くやる話になったので、アルバイトがやりやすいと思われる畑山高校を進路に選んだのだ。


 だから……ここで終わる訳にはいかないんだ!

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