第25話 首なし騎士

 東武署の刑事、遠藤は科学捜査によって得られた証拠を重要視し、たくさんの女とハーレムみたいな暮らしをする異端の刑事であった。そんな中宇都宮郊外の釜川川沿いの住宅地で発生した連続首なし殺人事件を解決するために、東武署からは遠藤が捜査官として派遣される。


 住宅地では既に富豪を含め四人が殺されているというのに、地主の小野寺勝男、教師の清原国行、蹴上浩二裁判官、医師の坂口慎吾、牧師の鈴原仙吉といった長老たちまで、二十年前の通り魔事件の際に、釜川付近で殺された残虐な蘇我達也(派遣会社社長)が、首なし騎士として蘇り殺人を犯していると真面目に話すのだが、科学による捜査を信条とする遠藤は、首なし騎士の存在など迷信にすぎないと断じていた。


 しかし、実際に首なし騎士の殺人場面に出くわしてしまい、その存在を認めざるを得なくなる。当初は、非現実なオカルトを直視したショックから錯乱していた遠藤ドだが恐怖を克服し、小野寺の夢見がちな娘、千代と、市長の従者だった父親を首なし騎士に殺された少年、恒之の協力を得て捜査を続行、そして森の奥深くで首なし騎士を呼び寄せる門である「死人の木」を見つけ出す。その一方、遠藤は毎晩のように魔女と疑われた母親が実の父によって処刑された過去を夢に見て、精神的に追いつめられていく。


 そして、怪奇事件の裏に世俗的な陰謀があることに気が付いた彼らにも、恐ろしい魔の手が迫る。


 市長、その息子、副市長、未亡人、弁護士、院長……次々と殺されていく人々と宇都宮の有力者の繋がりは、「市長が未亡人と密かに結婚し、彼女が妊娠した子供へ遺産相続させようと遺言した事を知る者」だと気づいた遠藤は、事件の黒幕は遺産相続を目論む地主の小野寺ではないかと疑いを抱く。そしてベッドの下に魔法陣が描かれていたことと、証拠を焼かれたことで、千代との間に確執ができてしまう。


 しかしその夜、首なし騎士は小野寺の後妻、徹子夫人を殺し、村の集会所である教会を襲撃する。混乱の中で市の長老たちも次々に死に、小野寺も首なし騎士に殺されてしまう。生き残った遠藤は教会に描かれた魔法陣を見つけたことで、小野寺ではなく千代こそが遺産を目当てに首なし騎士を操っていた黒幕だったのだと結論付ける。


 傷心のまま東武署へ帰ろうとする遠藤だが、たまたま搬送される夫人の死体を目撃し、それが別人であるという事に気がつく。千代の描いた魔法陣は「愛する者を守る」ためのもので、死を偽装した夫人こそが事件の真犯人だと見抜いた遠藤は、恒之と共に首なし騎士に襲われる千代を助け出し、夫人から首なし騎士の頭を奪い取る。自分の首を取り戻した首なし騎士は夫人を攫い、死人の木へと飛び込んで姿を消した。


 事件を解決した遠藤は、東武署に戻り署長賞を受賞する。

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