第9話 コブラX

 日向隼人 副署長 小栗旬

 獄門署長 舘ひろし

 矢神刑事 青木崇高

 黒沢刑事 宇梶剛士

 木村課長 橋本さとし

 米倉刑事 杉野遥亮

 残間 滝藤賢一

 陳刑事 飯田基祐

 鈴木課長 堺雅人

 獄門路美 上白石萌音

 

 荒涼とした砂漠の片田舎で、殺人課の刑事になる事を夢見ながらも、何もないハイウェイを取り締まる白バイ警官、矢神。彼はかつては東武署の刑事だったが、霧島部長刑事からのパワハラに耐えかね、大田原署に異動した。バイク『コブラX』に憧れる同僚、土肥がするユーチューバー達への嫌がらせを諌め、黙々と働く日々。


 ある時、老人の坂東から友人、尾藤が自殺したと通報され、矢神は土肥と共に現場へ踏み込む。検視官は自殺だと断定するが、矢神は自殺なら胸ではなく頭を撃つはずだと主張し、それが偽装された殺人だと見抜く。


 矢神の推理を聞いた東武署殺人課刑事の日向は、矢神を殺人課へと引き抜き、共にこの事件の捜査に当たるよう命じる。ついに夢実現の第一歩を踏み出した矢神だが、そこには病める日本の絶望的な現実が待っていた。


 坂東によれば、尾藤は最近ユーチューバー相手に麻薬取引をしており、売上の5000万を隠していたという。だが尾藤の家から麻薬は発見されたが5000万は見つからず、日向刑事はそれこそが殺人の動機だと推理する。日向刑事はユーチューバーたち相手に話も聞かず暴力的な捜査を行い、さらに矢神に自分の妻だと純子を紹介する。しかし純子が矢神ともベッドを共にしていた事を知った日向刑事は激高、矢神を再び白バイ勤務へと戻してしまう。


 やがて矢神と土肥は、日向刑事が犯人だと睨んでいた麻薬売人、分倍河原ぶばいがわらを逮捕するが、分倍河原は容疑を否認。分倍河原が犯人だと決めつける日向刑事に疑問を抱く矢神は、たった一人で作業する掃除夫の姿を見て真相に気づく。病死と聞かされていた自分の父親は、実は自殺だったことを矢神は知っていた。孤独こそが人を殺すのだ。


 実は殺人犯は通報した坂東であり、親友尾藤が若者たちと交流しはじめたことに対する嫉妬がその動機だった。坂東を逮捕した矢神は、日向刑事の見せかけだけの姿を責め立てて罵倒し、続いて土肥の家へ向かう。そこでは念願のバイク『コブラX』を手に入れた土肥が、大喜びではしゃいでいた。矢神に金の出所を問われた土肥は、ついに尾藤の殺害現場から5000万を盗んだことを白状する。追い詰められた土肥は銃を抜いて発砲し、反射的に応戦した矢神は土肥を射殺してしまう。


 夢を失い、自らの手で親友を殺した矢神は、何もないハイウェイで交通違反を取り締まる白バイ警官としての日々に戻る。


 ある日、以前土肥から嫌がらせを受けたユーチューバーの車を止めた矢神は、免許証を返し忘れたことに気づいて追いかける。しかし矢神の目の前に突きつけられたのはショットガンの銃口で、撃たれた矢神はバイクから転がり落ちる。そして矢神は荒野にうずくまるようにして、孤独に死んでいくのだった。

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