第4話 呉越同舟

 日向刑事は妻の純子と離婚し息子、善逸の親権も奪われ、純子と恋人関係になった市民活動家の瑞巌寺とは個人的にいがみあう関係となっていた。日向と瑞巌寺は職業柄、政治思想もまったく異なることもあり、険悪な関係により拍車をかけた。独り身となった日向はその後、東武署の引退を撤回して仕事に打ち込み課長へと昇進した。


 日向は刑務所における暴動を鎮圧するために署員を派遣するが、暴徒が交渉相手として瑞巌寺を指名し、一瞬のトラブルから瑞巌寺に銃を突きつけた暴徒を虎島刑事が射殺したため警察内部から大バッシングを受けることになるが、逆に宇都宮市民からは英雄的行為であると賞賛され、日向は東武署の副署長に昇進し、瑞巌寺は市議会議員に当選する。一方で暴徒を射殺した本人である虎島は刑事課から除籍処分を受けた挙句に書類整理係へと左遷させられ、屈辱的な扱いを受ける。友人である鈴木刑事からも慰めの言葉をかけられるが、虎島は怒りのあまりにマスコミに自らの処分について内部告発をして拘留される。面会にきた日向に自分の処遇に対して抗議するが、日向は今、虎島が置かれている状況は自らが招いたことだと叱責する。この状況を変えられるのは自分だけだと訝る日向に対して、虎島は変わるのは状況ではなく、日向だと反論。両者の溝は絶望的なほど深まってしまう。


 妻子、妻の再婚相手、そして虎島とも険悪な仲となり、日向はプライベートに生き甲斐を見いだせず、より一層仕事に没頭するようになる。日向は副署長としての立場を利用して刑事課を増強し、宇都宮ら麻薬の卸元を一掃してギャングの資金源を断つことに成功する。これでギャングと結びついた警察の汚職も無くなると気を良くした日向だが、ギャングの弱体化によって賄賂を得られなくなった汚職警官たちはギャングを排除して暗黒街を直接支配するようになり、龍造寺を筆頭とした汚職警官グループに、政治家まで加わった強大な悪の「システム」が出来上がってしまう。そんな中、私刑組織を率いる龍造寺は代官山というドラッグディーラーが治めている塙田地区を掌握するために、刑事課に代官山の組織を襲撃させる策略を思いつき、塙田地区の警察署の武器庫を襲撃して保管されていた武器を強奪する。そして、その罪を代官山の組織に被せ刑事課出動の大義名分を作り上げる。龍造寺は刑事課への復帰を条件に塙田地区の摘発に当たるように虎島に要請。そんな策略を知らない虎島はやがて私刑組織の陰謀に巻き込まれていく……龍造寺の陰謀に気付いた日向は、犬猿の仲だがただ一人清廉潔白な政治家の瑞巌寺とともに、社会の病巣に立ち向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る