第30話「あらぬ方向ですわ」

 私、エリアンナは、アレク様の深遠な言葉に心から感動しましたわ。

 彼の過去やこの屋敷の複雑な事情を知りつつも、アレク様とナナリーさんが私にとってどれほど大切か、それを改めて実感したのです。


「エリアンナ、俺の過去やこの屋敷の事は、なかなかに複雑だが、お前とナナリーにはここに居てほしい。お前たちがいるから、この屋敷も俺も生きていけるんだ」


 アレク様は力強く言いました。


 その言葉に、私の胸は熱くなりましたわ。私は彼の信頼に応えるために、そしてこの屋敷の一員としての自分の役割を全うするために、ここにいるのです。


「アレク様、この屋敷のため、そしてあなたのために、私は全力を尽くしますわ!」


 私は胸を張って答えました。


 アレク様は優しい微笑みを浮かべながら頷き、さらに言いました。「エリアンナ、信頼している。これからもよろしく頼む」


 その一言に、私は思わず照れ笑いを浮かべました。

 彼の言葉が私にとってどれほどの励みになっているか、言葉では表せませんわ。


 そんな中、ナナリーさんが静かに部屋に入ってきて、「エリちゃん、アレク様、私も屋敷の一員として、微力ながらお力になりたいです」


 アレク様と私はナナリーさんに向かって微笑み、彼女の温かな言葉に心から感謝したのですわ。




 しかし、その穏やかな時間は長くは続きませんでした。リディアが突然、エドモンドとの関係を断ち切り、この屋敷に住むと宣言したのです。彼女がエドモンドと付き合っていたのも、実はアレク様に近づくためだったという事実は、私たちを驚愕させました。


 アレク様は「やれやれ」とため息をつきながらも、人手不足を考慮してリディアの居住を許可しました。

 リディアは私に「エリアンナ先輩」と呼び掛け、彼女の真意が掴めないままでした。


 私たちがその事態に頭を悩ませている最中、ボロボロの状態でアメリア嬢が屋敷に現れ、意識を失い倒れてしまいました。私は彼女を介抱し、目覚めるのを待ちました。アメリア嬢は私にとって、ある意味で恨んでいる相手でしたので、私の表情は複雑でした。


 私と、ナナリーさん、アメリア嬢の様子に心配を示しました。

 この屋敷に何が起ころうとしているのか、私たちは皆、不安だらけでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る