12.Gaining Renown




 煙が立ち込める劇場から抜け出す4つの影。

 4人は煤だらけの服や髪なんて気にせず走った。


「あかん!火薬の配分間違えた!」

「あんたはいつもそうだ!!前は爆発させたし!!」

「うるさい!!!!片付けたんだから文句言うなアホ!!!!」


 走る4つの影。

 私達はこの街から離れ、夜が明けるまで走った。

 足の感覚が無くなるまで走った。

 何かを試すように、思いきり走った。


 4人で朝日が昇るのを見た。

 そして、4人で顔を見合わせた。

 目の前には綺麗な小川があった。


 それを見て、少し黙ってから、私達は顔を見合わせ、叫んだ。

 文字には書き起こせないようなくらい、汚く、そして、そこら中に響き渡るほどの下品な声だった。

 耳が裂ける程、喉が千切れるほど叫んだ。


 私達は遂にやり遂げたのだ。

 そのままの気分で小川に飛び込んだ。

 煤を洗い流すためかどうかは分からない。

 ただただ飛び込みたかった。高いドレスと同時に今までの常識を脱ぎ捨てた私達として。

 また叫んだ。今度は小川の冷たさで。


「風邪引く!!こんなん絶対風邪引く!!!!」

「良いじゃん!もうしばらく歌わないんだから!!」

「何ですかその理論!!あははは!!!」

「川なんて初めて入ったよ…こんなに心地良いものなんだね」

「心地良い!?この冷水が!?」

「僕はマゾヒストなのかもしれない!」

「鞭が必要なのは私じゃなくてダーリンだったか!!ギャハハハ!!!」

「笑い声汚」

「ドン引き」

「どこが純粋な少女だよ」

「あの時の同情してた気持ちを返せ」

「僕はそういうところが好きなんだよ」


 産まれて初めて、自分以外の誰かと一緒になって大騒ぎしたこの瞬間が、私にとっての青春になった。

 私達にとっての青春になった。

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