12.Sco



 お母様の細い腕、私と同じように育てられたお母様の腕が、私から離れる。

 私より年下なのに親代わりをさせられていたお母様。

 細かい石を握りしめているお母様の左手。

 石をぶつけて私を呼んでくれたのはお母様だった。

 お母様。お母様。


 ネイを追うと、私を見て馬鹿にするように微笑んでいる許嫁の彼も見えた。

 お母様と逢い引きでもしていたのかな、なんて思いながら彼と話した事を思い出す。

 彼は確か昔こう言っていた。


「苦労している君に言えることじゃないけど」

「うん」

「私も、君のように育てられたかった」

「どうして?」

「摘まれたかったんだ、花として」

「そうなんだ」

「僕だけの花、私だけの花、クレマチス」

「その愛称、大嫌い」

「じゃあ何て呼べば良い?」

「私の本名。ラムダ・ピスキウム」

「分かったよ、可愛いラムダ」

「もし、貴方が歌い手になったら」

「うん」

「最前列で、貴方の事を見させてね」

「勿論、一応許嫁なんだから、それくらい簡単だよ」

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