4周目

7月21日


 親友と一緒に夏休みの宿題をした。

 私は『宿題をすぐに終わらせたい派』だ。だから毎日やらないといけない宿題が大っ嫌い。つまり、日記は大っ嫌いなのである。だけど、最高の夏休みにするからこの日記にたくさんの思い出を書いてやる。


7月27日


 日記以外の宿題が終わった。親友があまりにも勉強ができなさすぎて6日もかかった。でも、これで8月は遊びまくれる。

 宿題をしながら親友と色々なことを話した。クラスについて、将来について、そして恋愛について。今年は彼氏作って青春したいって願望を親友は口にしていた。


8月2日


 親友とプールに行った。楽しかったけど、人が多くいたため思うように泳げなかったのが心残り。

 夕飯を一緒に食べようと思ったけど、親友は用事で先に帰ってしまった。

 どうやら、彼氏ができたらしい。実行の早いやつだ。

「どこで知り合ったの」と聞いたら、SNSだと言う。

 親友はとても嬉しそうに帰っていった。それがとても印象的だった。


8月6日


 親友の彼氏の友達が主催するキャンプに参加させてもらった。

 海に、バーベキューに、テントでの生活。どれも新鮮で楽しかった。男女でテントを分けてくれたのはポイントが高い。安心して寝られた。

 一人だけ趣味の合う男性がいた。彼は今回で3回目の参加らしい。キャンプについて聞くと、オーナーが毎年SNSで参加者を募っているようだ。男女の比は半々くらい。毎年この中からカップルが何人かできるんだとか。

 だが、私はそこには入れなさそうだ。彼は友達以上にはなれそうにない。


8月11日


 夏祭りに行った。親友とその彼氏、前にキャンプで会った趣味の合う男性もいた。

 4人で仲良く話しながら屋台を回った。この前はあまり話せなかった親友の彼氏とよく話した。

 彼氏と話している間、ちらちらと親友を見ると、不貞腐れた表情をしていた。どうやら彼女は私に嫉妬したらしい。

 最後に見た花火はとても綺麗だった。帰り道、親友は私に見せつけるように彼氏にギュッと抱きついていた。


8月14日


 お盆のため母親の実家に帰省した。

 特にやることもなかったので、親友と通話しながらゲームをした。途中、親友が彼氏に会いに行くと言い出した。「親友よりも彼氏を選ぶの」と面倒くさい質問を投げかけてみると、「うるさい。今は青春したいの」と叫ばれ、通話を切られた。

 それからは一人でゲームをした。


8月16日


 実家から帰ってきた。

 テレビをつけると、なんだか物騒なニュースが流れた。

 最近この辺りで『誘拐事件』が多発しているらしい。夜道はなるべく歩かないでおこうと思った。親友にもこのことを知らせると「なにそれ、怖すぎ」とブルブル震えたスタンプを送ってきた。本当に怖がっているのだろうか。

 それにしても、私たち二人はニュースに疎すぎではないだろうか。


8月18日


 親友と二人で遊園地に行った。

 待ち時間はひたすら親友の惚気話に付き合わされた。うっとうしかった。

「彼氏の家とかで遊んだりするの」と聞いたら、21日から彼氏の家に泊まるらしい。なんでも夜に彼氏の車に乗せてもらって家に行くとか。「誘拐の件もあるし、夜は危険だよ」と言ったら、「彼氏は昼間仕事だから夜しか空いていない」と言う。

 リア充大爆発しろ。連絡しまくって邪魔してやろうと思った。


8月20日


 今日から家族旅行。

 1年ぶりの旅行だから、とてもワクワクした。

 遊園地の時に散々彼氏の自慢をされたから、メッセージで親友に散々旅行の自慢をした。うっとうしがられた。いい気味だ。


8月21日


 ホテルの設備は最高だった。

 ゲームセンターやカラオケなどでたくさん遊べるし、温泉から見える景色は絶景だった。

 旅行の様子を親友に自慢していたが、夜になると途端に親友からの連絡が途絶えた。私を無視して彼氏とイチャついているに違いない。既読無視は流石に罪が重い。


8月23日


 親友の行方不明が発覚した。

 一昨日以来、親友との連絡が繋がらなくなったのが不安で、家族旅行から帰ってすぐに親友の家に行った。彼女の母親から「一昨日から彼氏の家に行っている」と聞かされた。次に彼氏のアカウントにメッセージを送ると「昨日帰った」と返信が来た。そこで行方不明になっていることに気がついた。

 親友の無事を祈るばかり。


8月29日


 親友が死体で発見されたと報告を受けた。

 全身から力が抜けた。もっと強く引き留めれば良かったと思った。


8月30日


 親友の葬式に参列した。

 多くの人が涙を浮かべていた。

 その中には親友の彼氏もいた。彼も辛そうに泣いていた。

 怒りが沸々と湧いた。どうせ俳優志望特有の嘘泣きだ。私は絶対に彼を許さない。

 静かな葬式に流れてくるセミの声がとてもうるさかった。

 夏休みがこれで終わりだなんて絶対に嫌。できることなら、もう一度やり直したい。

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