第14話 心配するセシリア

「ドロシー。この屋敷に居る者で、魔法に詳しそうなのって誰だろうか?」

「え? それならセシリアさんじゃないですか? ご主人様を治癒魔法で治されたと聞いていますし」

「あ、そうだった」


 つい先ほど冷たい目を向けられ、無意識に質問する相手から除外してしまっていた。

 だがTEに登場するのはイザベラとアルフだけだから、確かにセシリアに聞くのはアリだな。

 最悪、何かあってセシリアの好感度が下がりまくったとしても、俺の心が痛いだけで、殺されたりする訳では無いし。

 という訳で、ドロシーが選んでくれた二人に、後ほど直接会って話がしたいという事を伝えて食堂へ行き、食事を終えると、


「セシリア。少し教えて欲しい事があるんだが」

「……スリーサイズとかは教えません」


 早速セシリアを捕まえたのだが、思ってもいない事でジト目を向けられてしまう。


「いや、そんな話じゃなくて、魔法についてなんだが」

「何でしょうか。一応、私も使う事は出来るものの、そこまで詳しくありませんが」

「ひとまず、知っていたら……という事で」


 先程ドロシーと話している時に思い付いた、離れた者と会話する手段について聞いてみる。


「……という訳で、遠くに居る者と会話するか、もしくは状況が分かる魔法があれば教えて欲しいのだが」

「確かに離れた者と会話は出来ますが、その手の魔法は風魔法ですね。アルフ様は風魔法の才もおありですか?」

「いや、ない」

「であれば、少し話せる距離が近くなりますが、土魔法にもその手の魔法はあります」

「……土魔法も使えないんだ」

「そうですか。となると、私にはわかりかねますね」


 うぐ……求めている魔法がある事はわかったものの、よくよく考えたら俺は外道魔法しか使えないんだった。

 とはいえ、TEでアルフは奴隷に指示を出していたはずなので、俺が知らないだけで、外道魔法にもその手の魔法があるはずなんだよな。


「あの、思ったのですが、魔法の事なら私よりもイザベラさんに聞いた方が良いのでは? かなり魔法に詳しいはずですが」

「そ、そうだな。うん。いやー、その通りだな」

「……何かイザベラさんに疚しい事でもあるのですか?」

「い、いや? そんなのは勿論ないぞ。うん、イザベラを探して来るよ……あ、でもイザベラには俺から話すから、セシリアからは言わないでくれ」

「……はぁ」


 よし。これで隷属魔法の効果により、俺が会話系の魔法を調べていた事は、イザベラにバレないはずだ。

 どんな些細な事から、イザベラが魔王化するか、正直わからないからな。

 極力イザベラを刺激せずに、こっそり獣人族の村へフェードアウトするのが理想だ。

 そのための人材をドロシーに見つけてきてもらった訳だから、早く接触したいのだが……中々難しいな。


「……って、そのイザベラは今どこに居るんだ?」

「え? この時間でしたら、イザベラさんはお仕事に行っているかと」

「……仕事!? な、何の仕事だっけ!?」

「何の……って、アルフ様が指示しているのでは? 奴隷に適した人員探しを」


 おぉぅ。イザベラ……奴隷商人は辞めるって言ったのに。

 いやまぁ、イザベラには反対され、奴隷からの解放魔法を封印されてしまっているんだけどさ。

 更にイザベラはイザベラで、その奴隷探しが俺の為だって心の底から思っているから、隷属魔法の制約にも引っかからず……放っておいたら、また奴隷が増えてしまう!

 ……待った。この状況は利用出来るな。


「そうか。じゃあ、イザベラを探して来るよ。たぶん、スラム街に居ると思うんだよね」

「えっ!? スラム街へ行かれるのですか!? 危険では!?」

「大丈夫、大丈夫。ただ、道に迷うといけないからドロシーを連れて行くよ。あの辺りは詳しいらしいし」


 ふっふっふ。イザベラを探しに行くという口実で、ドロシーに見つけてもらった二人を紹介してもらう。

 これなら、会話魔法を使わずとも、直接会いに行く事が出来る。

 しかも、イザベラに見つかったとしても、イザベラを探していた……と言えば何も怪しくないからな。

 うん、完璧だ……と思ったのだが、セシリアから待ったがかかる。


「ドロシーさんは戦闘には向かないでしょう。イザベラさんが不在ですし、私が同行致します」

「えっ!? セシリアが!?」

「はい。イザベラさん程ではないですが、私も護衛は出来ます」


 そう言うと、セシリアが短いスカートを翻し、白い太ももが露わに……って、太ももにベルトなのが巻かれていて、小さなナイフが何本も刺してある!?

 いやそれ、何処かの女スパイとかが身に付けるやつ!

 しかも、その一本に手を掛けたので、大きく後ろへ跳ぶと、


「えっ!? 今の……見えたのですか!?」

「み、見てないから! 水色のパンツなんて!」

「そっちの話では……いえ、何にせよ思いっ切り見てるじゃないですかっ! やはり外道領主……いえ、変態領主とドロシーさんを二人っきりにする訳にはいきません! 私も同行します」


 何故か理由が変わってしまったが、セシリアも一緒に来る事になってしまった。

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