街への到着とクラのこと ⑤
「イミテア様の声を聞ける人って今いるの?」
「さぁ? 私は詳しくないわ。ノースティア様の信者である私のことをよく思っていない者たちの方があそこの信者は多いもの」
「イミテア様の神託を聞ける人とかが居たら、母さんはイミテア様と敵対していないって広まればいいなって俺は思うんだけどな」
母さんが危険か危険じゃないかでいったら……、自由気ままなので危険とはいえるかもしれない。
とはいえ、父さんに出会った今は昔よりは大人しくなっているのではないかと勝手に思っている。
そもそも手を出されなければ母さんは何もしない。基本的に人に興味はないから。
そういう母さんの本質が分かっている人たちは、母さんをそんな風には言わないだろうなと思う。そもそも排除しようとしたところであの母さんを排除できるはずもないので、手出しをしないようにするのが一番だろう。
「乃愛は怒ったら容赦ないと思うけど、そうじゃなきゃ誰かに構ったりしないよ」
「そうだよなぁ。母さんってそういう存在だもんな。そういえばクラは神獣化ってどんな感じだったの? 母さんが何か力を込めるとかそういう感じ?」
ただの黒猫を神獣として生まれ変わらせる。
それって通常ならありえないことなのだ。それをどういう風にやったのかと考えて見ても全く想像がつかない。あと父さんの新しい体についても。
通常ならばそんなことは誰も出来ない。母さんが神様だから出来ることでしかないのだ。
「んーとね、僕の体を卵にいれてた!」
「卵?」
「うん。なんか博人を楽しませるために見栄えをよくするって言ってたよ。多分、卵とかは実際に要らないと思う」
クラの言葉に母さんらしいなぁとそんな風に思う。
それにしても卵かぁ。どんな色の卵で、どういうものなのだろう? そういうことを考えているだけで本当にファンタジーな世界だなと思って少しワクワクする。
そういう卵みたいなのに入るとなると、出てきた時には全く別の何かになっているものなイメージだけどクラは神獣化したとはいっても以前と見た目も全然変わらないんだよなぁ。
「クラは見た目を変えようとかは希望しなかったの?」
「見た目? 僕はただ家族で一緒がいいしか乃愛に言ってない」
「そっか。まぁ、父さんが見た目そのままがいいっていったのかもな」
「僕も自分の見た目気に入っているから今のままでいい!」
その言葉を聞きながら肩に乗っているクラの頭を撫でる。
じっとフォンセーラがクラを見ている。
「フォンセーラ、クラのこと撫でたいのか?」
「……少しだけ。でも流石に神獣であるクラの頭を撫でるなんて恐れ多いわ」
「ふんっ、僕を撫でるのは駄目だよ! 僕はそう簡単に頭を撫でさせたりなんてしないから!」
そんなことを言うクラは、僕には頭を喜んで差し出してくるので可愛いなぁと思う。
俺たち家族のことは特別に思っていることが感じ取れてほっこりとした気持ちになって、引き続き撫でまわした。
「クラは神獣様ということだけど、どういったことが出来るの?」
「んーとね」
フォンセーラはクラを撫でることを諦めたらしく、質問を飛ばす。
そうすると少し悩んだ仕草をして、次の瞬間、その口から冷気が吐き出た。と思うと、木が一瞬にして凍った。
こういうのって火を噴く系が多いイメージだけど、氷なんだなどとどうでもいいことを考える。
「こういうの出来る!」
「凍らせる系統か。クラ、かっこいいな」
「うん。僕かっこいい! こういう力でサクトに手を出す奴許さない」
決意をしたようにそう言い切るクラ。
「こんな風に一瞬で凍らせるなんてすごい……。溶かせるか試してみてもいい?」
「うん。いいよ。多分、溶かせないよ!」
フォンセーラが火の魔法を使って、クラの凍らせた部分を溶かそうとする。
しかしその魔法をもってしても全然解けない。というか、今、太陽が空に登っている状態だというのに溶けない……。どれだけ強力なものなのだろう?
フォンセーラは風と火の魔法が得意なのに、その魔法でもどうしようもないなんてクラは凄いと思う。
「凄い……全然溶けない」
「ふふんっ。僕凄いからね! 乃愛がくれたんだ。こうやってすぐ凍らせられるの。他にも色々出来るよ!」
その凍らせるだけの魔法だけでも凄いのに、他にもクラは色々出来るらしい。母さんはどれだけクラのことを高性能な神獣にしたのだろうか……? 母さんならばすぐにそうやって色んな能力を人に与えられる人なんだなと思う。
――父さんはそういう特別な母さんを、ただの一人の女性として接してたんだなと思うとやっぱり凄い。
それからクラはどれだけ素早く動けるかとか、ちょっとした転移的な能力……ただし遠くまでは移動出来ないとか、凍らせる以外の魔法の力とか。
ただ母さんはなんだかクラを神獣化する時に遊び心があったのか、氷系に特化した能力を付与したようだ。黒猫で氷の神獣って、なんだかかっこいい。
あと姿も変えれるみたい。巨大化とか出来るらしく、見せてもらったけれど角もはやせるし凄いかっこいいものだった。
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