第4話 苦戦するエレノア
良し、早速サレンちゃんをお迎えに行こう! 書類も書いて引き継ぎも済ませたので、後はサレンちゃんを連れてお家に帰るだけです♪ 今日から長期休みだぁ〜♡
「もう夕方かぁ.......時間はあっという間に過ぎちゃうわね」
フィオナ室長達に迷惑掛けちゃったね。サレンちゃん良い子で待っているかしら?
「おぎゃぁぁああああああ!!」
「あら? この元気な泣き声はサレンちゃん!?」
エレノアは長い廊下を走りながらサレンちゃんが居る客間の方へと急いだ。
「失礼します。フィオナ室長、サレンちゃんのお迎えに参りました」
「エレノア様、お仕事ご苦労様でした。見ての通りメイド達とサレン様のお世話をしていたのですが、中々泣き止まなくて.......」
「ご迷惑をお掛けして申し訳無いです。みんなありがとね♪ サレンちゃん〜迎えに来たよ♪」
エレノアは泣いているサレンちゃんを優しく抱っこして、赤ちゃん言葉であやそうと試みる。
「ぐすんっ。あうっ.......?」
「はぁ〜い♪ サレンちゃん良い子にしてたかな?」
「あ〜い♡ まんま!」
「あらあら、私はサレンちゃんのママでは無いけどね」
「んぅ? まんま!」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛か、可愛いしゅぎる! もう無理! 語彙力が崩壊して魔界へ飛んで行ってしまいそうだわ! 私、天に召されちゃうの.......!? 死ぬの!? 何なのこの胸のトキメキは!?
「あ、あの.......エレノア様? 大丈夫ですか?」
「はっ.......!? ごほんっ。大丈夫ですよ♪」
「うふふ.......エレノア様もそんな風な表情をなさるのですね」
え、私そんな変な表情してたかな? 執行者として、エレノア・クリスティーネのイメージを崩さない様に日頃から気を付けては居るんだけどなぁ。
「素敵な表情ですよ♪」
「そうですか? ありがとうございます」
フィオナ室長って不思議なお人です。年齢は私より少し上だとは思いますが、何処か安心感を与えてくれる太陽の様な女性です。
「フィオナ室長、本当にありがとうございます。しばらくの間お仕事をお休みになりますが、何かあれば遠慮無く言ってくださいね♪」
「はい、エレノア様。では、子育て頑張って下さい♪」
そして、私は深く頭を下げてからサレンちゃんを連れて客間を後にしました。
◆エレノア宅・その日の夜◆
ふぅ.......色々と寄り道しちゃったけど、無事我が家に帰って来ましたね。私はミニマリストなので、家も平屋で狭く、部屋には物もあんまり置いていません。物が無い方が精神的にもスッキリしますしね♪
「あ〜う!」
「あらあら、お腹空いちゃったかな? じゃあ、ミルクにしましょうね〜今準備するからね」
自宅に着いてから部屋のソファで少しゆっくりしようと思ってましたが、サレンちゃんがまたぐずり始めてしまったのであやしながらミルクの準備に取り掛かります。帰りにルーカス商会の支店に寄って、子育てに必要そうな物をあらかた購入して来ました♪
「よいしょっと.......これで良し」
しかし、この抱っこ紐は便利ですね〜背中に括り付けるだけで、両手が塞がれる事無くサレンちゃんを抱っこしながら動けるのだから。
「ふむふむ、この本によれば50℃くらいのお湯でミルクを湯せんして、温めたら.......少し冷やすのかな?」
「あぅ.......おぎゃああああああぁぁぁ!!」
「ま、待ってサレンちゃん.......!? 今ミルクの準備してるから! ね? ほ〜らぁ、イナイナイ〜バァ♡」
桶に水を入れたら、後は温めて.......そして、これをこうして.......
「痛てて、サレンちゃん.......髪の毛は引っ張っては駄目だよ?」
「あうっ.......!」
幼い子の感情の起伏が激しすぎる.......泣いたり笑ったりと色々と忙しいですね。
「良し! サレンちゃん出来たよ! 私のお手製ミルクだよ♪」
「ばぶっ」
ソファの上でサレンちゃんを抱っこしてミルクをあげたら、小さなおててを使って美味しそうにゴクゴクと飲んでくれました! こうして見ると本当に天使のように愛らしい子です♪
「ごくごく.......」
「落ち着いてゆっくりと飲んでね。誰もサレンちゃんのミルクを取りはしないから」
私の腕の中で一生懸命にミルクを飲むサレンちゃんを見てると、とても内心穏やかな気持ちになります。
「ふふ.......私が子育てか」
今ままで私は数多くの敵をこの手で殺めてきた。それが例え極悪人だとしても私の手は汚れている。そんな汚れた私にこの子の母親になる資格等は無い。サレンちゃんには、然るべきちゃんとした人物の元で健やかに育って欲しい。
「..............」
エレノア・クリスティーネ.......時折、自分の存在が何なのか分からなくなる時がある。この名前も与えてもらった名前.......それに親の顔も知らない。物心着いた頃には、あのおぞましいスラムの掃き溜めに居たのです。
「あーい♪ げぷっ.......」
「よしよし〜ちゃんとげっぷも出来て偉いね♪」
まあ、暗い事を考えるのはやめにしよう。今はサレンちゃんを寝かし付けるのが今は先ですね。
「まんま」
「ん?」
「あーい♡」
「うふふ.......頬っぺたつんつん♪」
あらあら、私の人差し指をムギュっと握っていますね。今思えば、私も幼い頃はこんなにも小さかったのかな.......触れたら壊れてしまいそうな程に華奢ですね。
「んん〜むにゃむにゃ」
「あらあら、サレンちゃん今度はお眠かな?」
「んにゅ.......すぅ.......すぅ.......」
うふふ♡ 今日はゆっくりとお寝んねしてね♪
「良い子良い子〜♪ サレンちゃん、おやすみ♡ あ、やば。ベビーベッド買うの忘れたわ.......とりあえず、ソファの上をベッド代わりにしようかしら」
エレノアはサレンちゃんをソファの上に寝かせてお風呂場へと向かおうとするのだが、ここでサレンちゃんがまた涙目を浮かべながらグズり始める。
「あう.......まんま? おぎゃああああぁぁぁ!」
「ええ!? どしたのサレンちゃん!?」
あらあら、もしかして私が居なくて寂しいのかしら? 抱っこしたら何とか泣き止んでくれましたが、このままベッドに戻してもまた泣いてしまうかもしれませんね。
「ん? 何か臭うわね.......ま、まさか!?」
「おぎゃああああぁぁぁ!!!」
あ、寂しくて泣いてたのでは無く、今度はオムツの方だった!?
「ううっ.......臭うわね。サレンちゃん、少しだけ大人しくしててね〜」
「あうっ」
「うっ.......おぇぇ.......これはキツいわね」
てか、使用済みのオムツは何処に捨てよう.......流石にゴミ箱にダイレクトに入れると部屋が匂うし。
「ばぶっ!」
「は〜い、すぐにオムツ替えるからね♪」
しまった!? サレンちゃんのお尻を拭く清潔な布が無い! 帰りに商店で買っておけば良かった.......何か代わりになる物.......
「あ、丁度良い所に良さそうな紙があるわね」
「あーう」
「は〜い、サレンちゃん少し我慢してね〜拭き拭きするからね♪」
この紙.......良く見たら機密関係の紋章が刻まれてる.......合成麻薬や密輸に関連する重要機密文章の様ですね。
「まあいいか.......何とかなる」
一旦落ち着こう。冷静になるんだエレノア! いつもは冷静な筈なのに今日はサレンちゃんに振り回されている気もする。
「あーう!」
「よしよし♪」
今度こそサレンちゃんを寝かし付けるわよ! 私もお風呂に入って今日は早く寝たい。疲れた.......
「良い子はお寝んねしましょうね〜」
「あう! あだぶ!」
サレンちゃん本当に元気だなぁ。まあ、抱っこして優しくあやしてあげれば直ぐに寝るでしょう。
―――5時間後―――
「すぅ.......すぅ.......」
「あは.......あはは、やっと寝たわ.......」
あれからサレンちゃんを寝かし付けようと頑張ったのですが、私が抱っこしないとサレンちゃんが直ぐに泣いてしまうのです。この状況では流石にお風呂に行く事も出来ません。
「子育て舐めてたわ.......まだ初日と言うのにこうも大変だとわね」
これ私寝れるのかな? またソファの上に戻したら、サレンちゃんが起きて泣いてしまいそうね。
「すぅ.......すぅ.......まんま.......」
「サレンちゃん.......」
サレンちゃんは恐らく親に捨てられたのか、又は盗賊達が誘拐をしたのかのどちらかと私は推測しています。エルフは容姿端麗で金持ちの変態共に高く売れますからね。
男性のエルフは労働力として使われ、女性のエルフは変態共のおもちゃにされ犯される。本当に吐き気がするわ。クレア様が女王になってから、我が国では奴隷は一切禁止になったけど、まだ奴隷商の連中もこそこそと影に隠れて、後ろめたい事を悪びれも無く平然とやっている。
「..............」
シャロン達に色々と調べてもらったけど、当時の現場からはこの子の親らしきエルフは居なかった。もし親が見つかればサレンちゃんを親に引き渡すのだが、恐らくこの子は.......
「むにゃむにゃ.......」
引き取り先が見つかるか分からないけど、この子がもう少し大きくなって、せめて喋れる様になるくらいまでなら私が面倒を見ても良いかもしれない。
―――エレノアは結局朝まで、サレンちゃんを抱っこしていたのであった。
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