ワッフルが食べたい

戸北那珂

京葉線

「おいしかった。今度は限定のやつ試してみようよ」



東京駅の地下にあるワッフルが有名なカフェを出たのは午後4時になるかならないかぐらいだった。全休の月曜日なんて朝ごはんを食べるのはどうせ10時とかになるんだからいっそのことお昼の時間におやつを食べてもいいんじゃないか、めっちゃ混んでるか逆に空いてるかの二択だろうけど、というわけで12時半に待ち合わせてお店に入ったのでかれこれ3時間以上は話し込んでいたのだった。


「今日は付き合ってくれてありがとね。なんでだかおごらせちゃったし」


「別にいいのよ。ここからはわたしのわがままを聞いてもらうターンだもん」


――――――――――


一つ上のフロアに上がってお土産屋を通り過ぎると見えてくるコンコースは相変わらず果てしなくて、3分後に出ると書いてあった快速には間に合いそうもなかった。



「なんで京葉線ってこんなに遠いんだろうね」


「なんでだろうね。でもちょうどいい食後の運動にはなるよね」


「確かに。じゃあそう言うこと言う人は動く歩道禁止ね」


「えーいじわる。あんただっておんなじくらい食べてたじゃん」


「しょうがない。付き合ってあげようじゃないの」


――――――――――


わざわざ動かないところを歩くのはツイステの広告の写真を撮る物好きぐらいしかいなかった。



「だってどうせこの後もまた食べてばっかになるんでしょ」


「よくご存じで」


「もしかしてまたワッフル食べようと思ってたりしてる?」


「ちょっと思ってた。なんでわかるの」


「カリブの向かいのとこでしょ。いっつも混んでて行ったことないんだよね」


――――――――――


そんな話をしながらうだうだ歩いていると6分後の武蔵野線も逃す羽目になったのでホームのベンチに腰を下ろすとむわっとした風がどこからか吹いてきた。



「ま、そんなに乗りたいものがあるわけじゃないしね」


「え。うそ。ホンテ乗りたい」


「5時前には全然着けてぴったで入れるはずなのでその希望叶えてさしあげましょう」


「ならビッグサンダーも」


「それはちょっと欲張りじゃん」


――――――――――


トンネルの中と海の上を20分走ってたどり着いた舞浜駅は週の始めだというのにそこそこの人で、ボンボに寄るよりゲートの前で並んでおくほうがよさそうだった。すでに列は伸びていたのでこの人数から逆算すると今日はまあまあ混んでる日といえそうだった。



「この時間にアプリ見とくとお土産買う時間の節約になるんだよね」


「そうだけどさお店で見て回るのが楽しいんじゃん。あ、見てこれワッフルメーカーだってかわいくない?」


「ありだね今度ワッフルパーティーするか。つーかこれなら中で食べなくてもいいいのでは??」


「大事なのは雰囲気よ分かってないねー。中でたべるからおいしいんじゃん」


「まあそれはそう。というか私たち今日驚くほどワッフルの話しかしてなくない?」


「たまにはそういう日があってもいいと思うけどな。」


「恋バナだってしたので良しとするかー」

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