11月7日 夢日記『スーパーマーケット』

 11月7日 夢日記『スーパーマーケット』


 ……俺は何処かの扉の鍵を破壊しようとしていてる。鍵は固く閉ざされ、決して壊れる事は無い。


 俺はバールを取り出し、扉の隙間に捩じ込んだ。


「開かない……開かない……開かない……」


 俺は扉を開けようと必死だ。バールを扉の隙間に突き立て、ぶつぶつと独り言を呟いている。


 何処へ繋がる扉だろうか?その扉は開く事は無い。俺は扉を開ける事を諦め、別の侵入ルートを探す。

 

 周囲は暗い、どうやら真夜中のようだ。静寂が包み込み、眠ったような町。

 辺りには誰もいない。建物にはどこか見覚えがある。


 俺は建物の周囲を確認し終えると簡単には入れない事を悟り、辺を物色し始めた。

 落ちていたブロックを手に持つとそのブロックをガラスの扉に強く投げ込む……ガラスは大きな音を立てて割れた。

 

 散らばるガラスを避け、扉の中へ侵入する。入り口付近にはカートや買い物かごが置いてある。

 

 カートや買い物かご……俺はここを知っている、近所のスーパーだ。

  

 店の中は、もう営業が終わっている為、とても静かだ。野菜やフルーツの香りが鼻をついた。


 俺はりんごを一つ手に取り、齧る。


 りんごを齧りながら、積まれた野菜を手当たり次第蹴散らしそこら中にばら撒いた。

 また昨日の夢と同じく、楽しげに鼻歌を歌っている。


(やめてくれ!)……夢の中の俺へ叫ぶ。


 続けてリンゴを、齧る。


 夢の中の俺は、果物が並ぶ棚の上に登り桃や梨、ぶどうを次から次へと蹴り飛ばす。

 俺はとても楽しそうにしている。


(お願いだ!もうやめてくれ)……夢の中の俺へ懇願する。


 更にりんごを、齧る。


 バターにチーズ、納豆に豆腐、缶詰にジャムと手当たり次第そこら中に放り投げる。


 夢の中の俺に、声は届かない。


 齧ったりんごを放り出し、俺は煙草に火をつけた。

 煙草を吸いながら店のバックヤードに侵入するとそこには警棒が置いてある。

 俺は警棒を手に取るとニヤリと笑う。その笑顔を見て、もう何をするか容易に想像ができてしまう。

 

 警棒を振りまわし、棚という棚を力強く叩き壊していく。棚は歪み、商品はそこら中に散らばる……更に勢いよく棚を倒していく。


 俺は二つ目のりんごを手に取り、齧りはじめる。


 レジが何台も並んでいる……俺は鼻歌を歌いながら、警棒で一台一台レジを壊していく。

 何度も何度も叩きつけ、機械の破片がそこら中に飛び散る。


 振り返ると店は、もう滅茶苦茶になってしまっていた。

 潰れた野菜や果物がそこら中に飛び散り、陳列されていた商品は酷く散乱している。

 棚はドミノ倒しのように倒れ、壊れたレジはもう使用出来ないだろう……


 夢の中の俺は、満足したのか店を出た。店を出ると夜は明け始めている。

 通りには誰もいない……静寂がどこまでも広がっている……


 すると、どこからか手を叩く音が聞こえてきた……手を叩く音は次第に早くなっていく。

 これは……拍手だ。誰かが拍手をしている。俺は音の出所を探した。

 さっきまで誰も居なかった道の真ん中にあの少年が立っていた。

 どうやら少年が拍手をしているようだ。


「すごいね。店は滅茶苦茶だ……昔、自転車小屋も滅茶苦茶にしたね……」


 自転車小屋……何を言っているんだろう……


 少年はいつまでも拍手を辞めなかった。繰り返す拍手が不快に感じる。


「すごい……楽しいね……」


 少年はいつまでも拍手を辞めない……拍手に包まれ、夢から覚めた。

 

 


 

 

 

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