気持ち日記
色葉みと
1ページ目 ピザまん
———風は冷たい。空は暗い。人通りはあるが、なんだか別世界のことよう。
バイト終わりの「世界に一人取り残された感」。今日は特に心地がいい。
……なんか、温かいものがほしい。コンビニ寄って帰ろっと。
なんでだろ? 特にこれといった何かがあった訳でもないのに、メンタルがやばい。あ、でも間接的な理由ならいくつか思い当たらないこともないような……。油断したら涙が出てきそうになる。
それにしても、この感覚久しぶりだな。真っ黒な渦があって、それにだんだんと「自分」が飲み込まれていく感覚。自分のことも周りのことも、何もかもが嫌になっていく感覚。手足が冷たくなり、表情が抜け落ちていく感覚。
3年前の暗黒の時代(自分史)を思い出す。真っ黒な渦から抜け出せない、辛くて、苦しくて、どうしようもなかった記憶。……ああ、嫌なこと思い出した。
「いらっしゃいませ〜」
眩しい。暖かい。コンビニに入ると、自分が世界に戻ってきたような気がした。
肉まんとかあるかな? あ、ピザまんが最後の一個だ。
「ピザまん一つください」
「はい。160円になります」
160円を払って、ピザまんを受け取る。
「ありがとうございました」
その言葉に会釈を返した。
店員さんの笑顔とピザまんのあたたかさに、心がほわっとするのを感じながら外へ出る。
コンビニ、寄ってよかったな。
家に帰って手を洗って、ちょっと冷めたピザまんを食べる。初めて食べたけど、これおいしい。
弟に「一口ちょうだい」と言われたから一口あげた。笑顔で頷いている。おいしかったらしい。
真っ黒な渦はまだある。でももう飲み込まれてはいない。足を滑らせたら飲み込まれそうではあるが、ひとまずは大丈夫だろう。……油断したら涙がでてきたけど。
今日は早く寝よう。こういう時は、寝るに限るよね。
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