亀を助けよ

「私は国の独裁者。町の景観を保つために、思い切ってすべてのホームレスを駆除することを決定しました」


「いや、随分と振り切った政策だな」


「もちろん、害のないホームレスがいることも事実だ。そういう人の為の救済措置も用意してある」


「じゃあ大丈夫そうだな、ある程度は」


「しかし問題が……」


「どんな?」


「ホームレスにも人権が、って連中がね……」


「なんだ、そんなことか」


「そんなことって」


「そういうのは、こういう連中と一緒さ。ほら、遊園地が閉園になるって投降に、群がってるだろ?」


「なになに、寂しい、つらい……普通の感想じゃないか」


「遊園地が欲しいのは来客であってコメントじゃない」


「あぁ……」


「ホームレスもそうだ。その反響にそって救済基金でも立ち上げてみよう」


数か月後


「基金はどうだい?」


「言われたとおりにやってみたよ。全然集まらない」


「ほらね。彼らは“亀”を助けたいんじゃあない。一方的に殴れる相手を探してるだけだよ」


「亀を助けない、浦島太郎……か……」

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