第38話 魔法の適性
俺はレジスタンスの三人――ダークエルフのミアさん、ドワーフのガルフ、犬獣人のモーリーにアメリカ政府の希望を話した。
リーダーのミアさんが三人を代表して答えた。
「なるほどな。住民を脱出させる作戦は手伝おう。だが、その……アメリカ? という国と話すのは、うーん……」
「ダメなのか?」
「私は、この三人の戦闘部隊のリーダーに過ぎない。レジスタンスを代表する立場にないのだ」
「なるほど……。アメリカ政府と何か約束することは出来ないってことか? 同盟を組むとか?」
「そうだ。私には決定権がない。だが、レジスタンスは霧の帝国に抵抗する組織だ。色々な世界の政府と協力関係にある。まず色々と意見交換や情報交換をするというのはどうだろう? そして政府の希望をレジスタンスの本部に伝えよう」
「アメリカ政府は、ミアさんの申し出を受けると思う。えっと、キャンディスさんに説明するから、ちょっと待ってくれ」
俺はキャンディスさんに、ミアさんの言葉を伝えた。キャンディスさんは、ふんふんと上機嫌でうなずく。
「ご協力に感謝します。ミアさんの言葉を上司に伝えます」
「ああ、待ってくれ。ユウマの奥方にこれを」
ミアさんが指輪を取り出した。翻訳してくれる指輪だ。キャンディスさんが指輪をはめ、ミアさんと直接話し出した。
俺は二人の会話を邪魔しないように、そっとキッチンの片付けを始めた。
「お手伝いするよ!」
俺がキッチンで洗い物を始めると、モーリーが食卓から使い終った食器を運んでくれた。
「モーリー。ありがとう」
「ユウマは凄いね! 身体強化魔法の使い手なんだね!」
「ああ。自己流だけどね」
「教わらないで身につけたの!? 凄いよ!」
「えっ? そうなの?」
モーリーの話し振りからすると、俺が戦闘で使った身体強化は、身につけるのが難しい技術らしい。
ドワーフのガルフもやって来て会話に加わる。
「魔法は適性があるからな。俺も魔力があるが、魔法は使えん」
「魔力は霧のせいで?」
「そうだ。ミアは産まれながらに魔力を持っている。ダークエルフという種族特性だな。魔法も使える。ユウマのように後天的に魔力を得て、魔法が使える人は珍しいんだ」
「へえ……。割と簡単だったけど」
「普通は簡単じゃねえんだよ」
ガルフはグビリとバーボンを瓶から直で飲んだ。
どうやら俺は魔法の適性があるらしい。だが、ゲームのようにファイヤーボールを撃つことは出来ない。俺はガルフに聞いてみた。
「遠隔攻撃の魔法ならミアが使えるぞ。だが、エルフとの戦いでは牽制にしかならん」
「ああ、そうだね。魔法の障壁で防がれる」
「そうだ。だから、ユウマが使った無属性魔法は有効だぞ! 接近して……こうか?」
ガルフが俺の使った発勁の真似をする。接近して手のひらを密着させる。あの動画では一瞬の出来事だったが、ガルフはよく見ている。それだけ戦闘に慣れているのだろう。
「やって見せようか?」
「ああ。見せてくれ!」
俺はバーボンの空き瓶を持ってベランダに出た。
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