救質しますが、高額です
綾風 凛
第1話仕事人
カイは氷の入ったケースをバーテンに渡した。
バーテンは愛想もなく、それを受け取り空のケースを返した。
「サンキュー」
カイはそう言って店を出た。
午後5時のブルックリンはまだ明るいが、治安はあまりよくない。
特にコロナ後は、アジア系の住民が数多く襲われている。
カイはフランス系のダブルなので東洋人とは思われていないが、何回かからまれたことがある。
カイは海軍兵学校を卒業した元軍人だ。
チンピラはまるで、相手にならない。
数人のチンピラ達も、尻尾を巻いて逃げ出していく。
カイは部屋に入ってすぐに、空のケースを開けた。
中には二人分の日本人のパスポートが入っていた。
一人は女性の名前のパスポートだ。
今回のミッションは、高貴な女性を救出して彼女の母国に送り届けることだ。
その女は、ダウンタウンの会員制のクラブで男たちの話し相手をしている。
見せかけはナイトクラブだが、交渉次第でベッドをと共にすることもできる娼館だ。
そこにいる高級娼婦は、訳ありか野心家の女達ばかりだ。
女の素性は某国の王女だったが、一般男性と恋に落ちて駆け落ち婚をして王室を離脱した。
その後、男と結婚してニューヨークのマンハッタンで暮らしていた。
最初は王室が用意した、マンションに住んでいたが男の仕事が決まると職場の近くに引っ越しをした。
有名セレブが住むタワーマンションを購入して住んでいるはずだった。
最初はスカイプやフェイスタイムなどで連絡をしてきたが、最近はメールばかりで顔や声がわかるものには出なくなった。
当然電話をかけても出てこない。
今までは着信があれば、メールで返事がきた。
不審に思った両親が大使館を使い捜し始めたが、手掛かりすら見つけ出せなかった。
しかし暫くすると、絵葉書が届いた。
ご心配をかけていますが、元気です
レイと私は今仕事の都合でパリでの生活です。
一年はこちらでの生活になると思います。
住むアパートが見つからないので、今のところホテル暮らしです
携帯の電波が悪いので、これからは手紙で連絡をします
お身体に気をつけてお過ごしください。
葉書には住所がないが、元気だと伝えてきた。
彼女と夫は今、パリにいるらしい。
だが、消印はニューヨークだった。
王女の両親の皇太子夫妻は王女の夫を怪しんでいた。
元々二人の会話や王家一族の会話も全て録音をしていたことが判明していた。
夫は奥深いところで闇組織と関係していて、王女はどこかで軟禁されているのではないか。
疑った両親は調べることにした、
ニューヨーク市警を頼ったが、居所はわからなかった。
邦人の救出は政府の仕事だが、闇組織では捜索できない。
テロリストでの人質なら、CIAかNSAでしか取り扱うこともできるが、 両方ともアメリカ国民でないと救出はできない。
そういう時は民兵を使うが、料金が高額だ。
王族である両親は、金に糸目はつけない身分だ。
民兵の組織は軍隊を除隊した人たちが中心になって作られた部隊だ。
カイはその民兵組織のメンバーの一人だ。
いくつかの闇組織をあたった結果、王女の軟禁されている場所がわかった。
今晩は軟禁されている高級クラブへ、客の振りをして探しに行くことになった。
会員制なので紹介者を見つけ、メールで予約を入れた。
王女と思われる女はラパン人の客には会わないないことになっているが、フランスとラパン人のダブルのカイはラパン人には見えない。
高級なスーツを着て、その場所に行くことにした。
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