21話 食材調達フィッシング
生態系の迷宮2階層、清らかな滝や川と熱帯雨林のような緑に囲まれたこの階層には、多数の毒モンスターや水棲モンスターが生息している。
ゴンザレスとの交渉から約1週間後。アキナとレナは料理動画撮影のために、この階層にやってきた。
「皆さんこんにちは♡ アラフォーなつめです♡ 今日はコラボで釣り系配信者の宅麻淳美(たくまあつみ)さんのチャンネルに、お邪魔してます♡」
とはいってもアキナはあくまで聖女。治癒や補助の魔法では絶対的な魔力と技術を持つが、モンスターを狩ることは不得意だ。
なので、それを専門にしている配信者に来てもらった。
当初、レナは地上を歩いているフィンウォーカーを探索バトル系のダンジョン配信者と一緒に狩りをして料理することを考えていたようだった。しかし成長して地上を歩くようになったフィンウォーカーは不味いので断固拒否をし、まだヒレの発達が未熟なフィンウォーカーを釣る企画に変更した。
企画内容の変更をどこからか聞いたゴンザレスは、歩いているフィンウォーカーの方が旨いと言って勝手に怒っていた。
そういえばパーティーの男の子達は何故か皆、歩いているフィンウォーカーの方を好んで食べていた。
(あんな硬くて臭いのどこが美味しいのかしら)
「アキさん」
オープニングの撮影が終わって、レナが話しかけてきた。
「宅麻淳美、よく引き受けてくれましたね。今は物販に力入れてて、配信はほとんどやってないはずっすよ」
「そうなのね。ダンジョンで釣りをするのは初めてだから、いい機会くれてありがとうって言ってはわよ」
釣りに興味が無いアキナは、釣り系配信者について全く分からなかった。
ただ、「きぶんしだいクック」というチャンネルで魚をさばく動画をよく見るので、それと頻繁にコラボしている女の子に、レナに言われて仕方なく作った×(旧:Twittew)のアカウントからDMを送り連絡をとっただけである。
(でも私SNSはmaxiの頃にめんどくさくて挫折したから、×もほとんど開く事ないのよね)
川につき、淳美が釣りの準備を始めた。
「うわあ!」
準備中、モンスターが襲って来たが、
「この中にいれば大丈夫だから安心して準備してね」
アキナが聖女の結界を展開し、難なく淳美を守った。
「さあ、行きますよ!」
淳美は釣竿を巧妙に振り、ルアーが水面に静かに着水する。
しばらくの間、釣り竿はピクリとも動かなかった。
その間も3人に何度かモンスターが押し寄せて来たが、全て結界に突っ込んでは当たって吹き飛ぶを繰り返し、しばらくすると近づいてくるモンスターがいなくなった。
「中々かかんないっすね」
「焦っちゃダメよ。釣りはよく分からないけど」
安全のために人間を襲う水棲モンスターがいないポイントを撮影場所に選んだが、そういった場所は相対的に全ての生き物が少ない。
少し危険だがポイントを変更するかどうかと、淳美と相談しようとしたその時だった。
「来ました!」
釣竿が大きく曲がった。一瞬の硬直の後、淳美は体全体で竿を持ち上げる。
「すごい! 何が釣れるのかな?」
はしゃぎながら、アキナは昔を思い出していた。
テントを張った横で食糧確保のために釣りをするパーティーリーダーだった当時のアキナの彼氏と剣士の男の子。自分はその時、釣った魚を調理するための準備をしていた。
魔法使いのエルフの女の子は……。
(本を顔に被せて寝てたわね)
そんな事を考えているうちに、淳美は見事に魚を釣り上げていた。釣りあげたのはお目当ての、まだ水中にしか生息できない未成熟なフィンウォーカーだ。
「すごいわ! モンスターの魚を釣り上げるなんて初めてよね?」
「昔、海外でアロワナっていうでっかい淡水魚を釣った事があるんです。それと外見が似てたんで餌とか仕掛けをその時の感じで合わせて見ました。適当にやったことが、たまたま上手くいった感じです」
しかも未成熟であるにも関わらず80cm近くあり、かなり大きい。
「でも、なつめさんにバリアを張ってもらわなきゃ、こんなに安心して釣ることはできませんでした。いい絵も撮れましたしありがとうございます!」
「そういってもらえると嬉しいわ。今度はこっちがお礼をしなきゃね」
「じゃあ、これから準備するっすね!」
「待って、私も手伝うから」
釣りの撮影の間、ずっと横に置いていた折り畳みテーブルを広げる。
レナはずっと背負っていた大きなリュックを降ろし、調理器具や調味料を取り出してくれていた。
「あちゃー。リュックから1つ、1つ出しながら調理器具や調味料を紹介する感じの動画撮れば良かったすね。しまった~」
「作るの久しぶりだから、上手くできるかどうか不安だわ」
出だしは失敗し、先行きにも少し不安が残る中、2人は料理動画の撮影を始めた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ご拝読いただききありがとうございます。
さて釣りが終わりましたので、次は飯テロ描写でございます!
初めての試みでしたので知人に校正をお願いしつつ一生懸命書きましたので、是非読んでください!
この小説が面白いと思って頂けましたら、執筆する励みにもなりますので、★とフォローをお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます