第92話織田の強み
戻って小諸。
菅沼正貞「仮に信長が武田の馬を封じ込める事が出来たとしましても、白兵戦では武田に分があります。」
高坂昌信「徳川の兵も強いぞ。」
菅沼正貞「確かに。しかし数の上では武田に対し劣勢を強いられる事になります故、時間を経るに従い家康が苦しくなる事は三方ヶ原で証明しています。一方の織田は如何でしょうか?」
高坂昌信「殿が来た瞬間、逃げてしまうと聞いている。」
菅沼正貞「武田様を油断させるためでしょうか?」
高坂昌信「それはわかりません。わかりませんが、高天神の時は何か備えをしていた事は確かでありましょう。」
菅沼正貞「そうなると此度も?」
高坂昌信「そう見て間違いありません。先程、うちの強みは馬である。と仰いましたが。」
菅沼正貞「武田の弱み。織田の強みでありますか?それは経済力です。もし武田様が今の信長の勢力圏で。しかも信長同様の敵を抱えた場合どうなりますか?」
高坂昌信「『各人の持ち場。自分たちで守ってくれ!』」
菅沼正貞「亡き御館様の時にも同様の事態に陥った事があったと。」
高坂昌信「駿河に入った時はそうであった。北条と上杉が同盟を結び、徳川とは遠江で揉め。今川もしぶとく……。御館様(武田信玄)も
『信長が頼みの綱。』
と嘆く状況にありました。」
菅沼正貞「もしあの時、信長が今の状況。畿内が落ち着いていましたら……。まぁその話は置いておきましょう。」
高坂昌信「今の信長は、長期の対陣に耐え得るだけの物を前線に投入する事が出来る?」
菅沼正貞「はい。しかしそれだけでは勝つ事は出来ません。白兵戦に持ち込まれたら最後。織田軍は本国目指し、逃げ去る事になってしまいます。織田だけのいくさであればそれで構わないのかもしれません。
しかし此度は違います。徳川家康からの要請に応じての参戦。それも信長自身も目を掛けている奥平貞昌籠る長篠城の救援であります。武田が攻めて来たからと言って逃げるわけにはいきません。その恐怖心を如何にして取り除くか?そして武田からの攻撃を退けるか?」
高坂昌信「そこでうちと信長の経済格差を利用する?」
菅沼正貞「はい。」
高坂昌信「うちに無く、信長にある物を前線に投入する?」
菅沼正貞「はい。自ずと答えは見えて来るかと。」
武田勝頼本陣。
高坂昌信「織田陣で目立ったのは鉄砲であります。恐らく信長は鉄砲で以て我らを退けようと考えていると見て間違いありません。鉄砲だけでありましたら我らにもあります。しかし我らには決定的に不足している物があります。そうです。弾薬であります。信長の狙いは我らの弾切れであります。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます