2024年5月 伊豆霧月の日記より

昨日は、きりお姉ちゃんが遊びに来てくれました。きりお姉ちゃんは物知りで、いつもむずかしいことを話しています。でもむつきは、子どもあつかいされるより、きりお姉ちゃんみたいに話してくれる人のほうが好きです。

お母さんはきりお姉ちゃんのことを「京子」とよびます。きりお姉ちゃんの本当の名前は「京子」というらしいです。でもなぜかきりお姉ちゃんは、きりお姉ちゃんとよぶように言います。


昨日、きりお姉ちゃんは言いました。

「むつきちゃん、よ〜くきくんだよ。これからむつきちゃんには、しょうらいのことについてとやかく言ってくる大人がたくさん出てくると思う。でもそいつらは、だれひとり、むつきちゃんのしょうらいのせきにんを取らないから。むつきちゃんがまわりの大人の言うことをきくのも、きかないのも自由だけど、どの言葉を信じるかっていうせきにんは自分でもたなきゃダメだよ」


 いみはよく分からなかったけれど、きりお姉ちゃんがだいじなことを言ってくれたことはなんとなくわかりました。だからこうして日記に書いておきます。大人になったとき、これを読んだらいみが分かるかもしれないからです。


 それと、きりお姉ちゃんはもうひとつ、「ひみつだよ」といってはなしをしました。

「自分の人生のしゅうまくは、自分で決めたほうがいい。人生はものがたりだからね。それをハッピーエンドにするのもバッドエンドにするのも自分だけど、とにかく、まくを引くタイミングは自分で決めるといいよ。きりお姉ちゃんは今、さいこうのエンドロールを作ってるところなの」

 いみはぜんぜん分かりませんでしたが、少しだけこわかったです。きりお姉ちゃんがどこかに行ってしまうような気がしたからです。

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