幕間 少女の夢
少女の夢を見ていた。
自分ではない少女の夢だ。
広い庭を元気に走り回っている。蝶々が花壇の周りを飛んでいる。色とりどりの花も咲いている。きっと名前があるのだろうけれど。それを聞いたことも見たこともなかった。
知らない知識なのに夢で見る。不思議なことが起こり始めたのは信号を受け取ってからだ。きっと信号と一緒に発信者の記憶も流れ込んできたんだと思っている。でも感覚としては思い出した、に近い。
そう思っても不思議じゃないくらいに。その信号は自分の中の奥底にある何かを訴えかけている。
あの場所に行かなくてはならない。そう心で感じている。
夢の中の自分は少女を見ている。
その視点はだれのものなのだろう。少女が動き回るのに合わせて視線で追い続ける。目が離せないのだ。気にかけているのがその動きだけでも分かる。
少女がこちらにピンク色の花弁を咲かせた一本の花を持って近づいてくる。
目の前のその花を差し出された瞬間に暗転。シーンが切り替わるように景色が変わる。
さっきまでと同じ場所みたい。けれど、その様子は穏やかなものではなくなっていた。
庭が燃えている。遠くからは爆発音。キレイに整えられていた庭も家も見る影もない。匂いも音も少女自身に覚えがある空気に似ている。
戦場。
夢なのに妙に現実味があるその光景。
平穏だった家にそれが襲いかかったのだろう。視界は必死に少女の姿を探している。でも一向に見つからない。そうしている間に爆発音が直ぐ側で発生する。
衝撃で吹き飛ばされ視界が目まぐるしく回る。ようやく落ち着いた時、目に入ってきたのが壊れかけた家。屋根は崩れ、幸せだった空間はもうどこにもない。
それどころか。
落ちてきた天井に挟まれてるように人影が見える。それは見覚えがある少女だ。視界が震えるし滲む。仕方がないこと。大事な人が目の前で壊れてしまった。
それからまた、家が崩れてきて視界が暗くなった。
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