(一)-8

 そんな考えが延々と拓弥の頭の中でグルグル巡っていた。

 そのような折に、翔太は「はい」といって、プラスチック製のフォークの先に刺したポテトを拓弥の目の前に差し出してきた。

 拓弥は驚いて翔太の顔を見た。

「加島君、なんかさっきからぼーっとしてない?」

 それはそうだ。ずっと今までのこと、翔太のことを考えていたのだから。何を話していいのかわからなかったし、唇を動かそうとすると、その前に体が動き出し、両手で翔太を抱きしめそうな衝動に駆られるのだ。話なんか、できるわけない。だから拓弥は、ずっと黙っているしかなくなかった。


(続く)

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