第24話 私とは恋人ってこと?
その後、
僕が家に帰ってゲームの準備をしていると、
『首尾はどうだい?』
『まだわかりません』
『それもそうだね。じゃあ、とりあえずミッションを授けよう』
『ミッションですか?』
『そうそう。目的があったほうが喋りやすいでしょ? キミみたいなタイプは特にさ』
なんで知っているのだろう。
その手の人間観察は
『ミッションというのは?』
『キミの好きな食べ物を提示することと、
『自己開示の返報性ですね』
『よくご存知で』
心理学の用語だ。
相手が自己開示……つまり自分の情報を打ち明けてくると、こっち側も情報を開示したくなる。僕が自分の好きなものを伝えることによって、
もちろん、やり過ぎは逆効果だ。最初は他愛もない自己開示から始まり、最終的には深いところまで伝えていく。そうやって仲良くなっていくものなのだ。
『キミは博識だね。
『お皿でももらえるんですか?』
『10ポイント集めたら下の名前で呼ぶ権利をあげよう』
なんにせよ……
『不思議だね。なんかキミと話してると、話すつもりがないところまで話してしまうよ』
『僕には友達がいませんからね。秘密が流出することはないって安心感があるんでしょうね』
『私とは恋人ってこと?』
……本当に……回りくどい表現が好きな人だな。
『訂正します。僕に友達は
『わかればよろしい』私たちは友達でしょ?って言いたいだけならそう言えばいいのに。『キミとの会話は楽しいね』
『
『いるよ』以外だった。話していることが楽しいのだと思っていた。『なんというか、曲解して他の人に告げ口する人とは話してても楽しくないかな。ま、私も人のことは言えないけど』
曲解して他の人に告げ口する人……
なんとなくわかる。そんなつもりで言ってないのに、気がつけば自分が言ったことにされていることがある。
好きじゃないといっただけで大嫌いだと伝わっていたり、嫌いじゃないといっただけで好きだと伝わったりもする。
言葉というのは難しい。意思を相手に伝えるツールとしては未成熟も良いところなのだ。
『それは相手が悪いってわけじゃなくて、たぶん私と相性が悪いってだけなんだけどね。その人も他の人とは楽しく会話してるから』
そうなのだろう。その人にとっては曲解しているつもりはなくて、あくまでも自分なりに解釈しているだけ。そして他の人とも同じ話題で盛り上がっているだけ。
少しばかり思う所あるようで、
『合わないなら離れるしかないんだけど、なぜか付きまとってくる人もいるわけ。向こうも得しないのにね。私のことが嫌いなら、さっさと離れたほうがお互いのためだと思うんだけど』
本当にそう思う。
それとも……あれがツンデレというやつなのだろうか。
『ごめん。話がそれたね』謝ることじゃないけれど。『とにかく今回の目的は1つ。お互いの好きな食べ物を開示することだよ』
……目的か……
良いかもしれない。僕が通常の恋愛をして
ならば……できる限り理論に頼ろう。1つずつ目標をクリアして、ステップを踏んでいこう。
大丈夫。好きな食べ物を聞くだけだ。僕にだってできるはずである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。