第11話 見た事のある旅館に浴衣の披露
僕たちは旅館に到着したのはいいのだが、見たことのある光景が広がっている。やけに早いと思ったら…
ここ、三日月旅館じゃん!
行き先は親のみに通知しており、僕たちは学生はどこに行くかお楽しみ〜、と言うのがこの学校の修学旅行の新しいスタンスのようである。
「さー、着いた着いた! なにここ! すご!」
横で桜田さんはテンションが上がっている。温泉好きなのだろうか。
「え…」
ぽつりと呟き、桜田さんとは真逆で三日月さんは呆然としている。
「うおー、温泉地だ! お風呂入りまくるぞぉー!」
と、桜田さんより盛り上がっている颯太。
「おー!」
桜田さんは同意する。僕と三日月さんは変わらず沈黙している。
「どうした、颯太。やけにテンション低いな?」
「いやー、ちょっとね…」
颯太にはここに来ていることは言っていないので、まさか1年の終わりにも来たなんて思ってもいないだろう。
横では、
「どうしたの? 三日月さん? と言うか、三日月さんが三日月旅館に訪問て! おもろいね!」
「あはは、そうだね…」
まさか、本人の母親が仕切ってる旅館だなんて桜田さんは思ってもいない。この事実を知るのは先生達と僕と三日月さんだけだろう。
「はーい、じゃあ、この紙に書いてある部屋に向かってもらって、そこに荷物を置いたら夜まで自由時間でこの温泉街を満喫しちゃってください!」
楠木先生はみんなに聞こえるように、先生にしては珍しい大声で言う。
「「「はーい!!」」」
と言うことで、まずは部屋に荷物を置きに行くのだが、
……いや、そんな事あるのか。
まさかの前来た時と全く同じ部屋だった。
「蒼、ここに着いてからずっとぼーっとしてるけど、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。さっさと女子誘って温泉いこーぜ」
「え、お前まさかこんよ…」
そんなこと思ってるわけなかろう。
「殴り倒されたいか?」
「すいません…」
と、いつものように冗談を吹かしながら着替えの準備をする。
数分後、
「さあ、いくか」
「そうだな」
と言うことで、女子の部屋に向かうのだった。
それから僕らは部屋の前に到着する。
コンコンコン
颯太がドアを叩く。
「はーい」
そう言って、三日月旅館でレンタル中の赤色で花柄の浴衣を着て、頭にお団子を作っている桜田さんが出てくる。
「どう?」
「似合ってるじゃん、いいね!」
秒で颯太が返す。
「ありがと! 鳴釜くんはどう思う??」
「にぁ……」
やっぱり無理かー、ってことで、グッチョブをしておいた。
「似合ってるってとっていいよね? ありがとう!」
「んで、三日月さんは?」
「あー、多分もうちょっと出ててくると思うよ? 美優ちゃんー?」
すると、三日月さんが姿を現す。
青い花柄の浴衣に、桜田さんと同様に長い髪の毛はお団子に丸まっている。
「なんというか、すごく似合ってる」
って、そのまんまや。
「え、あ、ありがとうございましゅ」
三日月さんは頬を赤く染めてそういう。最後のしゅで、さらに赤くなった。
三日月さんは本当に可愛すぎてやばい。
「え? 声に出てた?」
「ばっりばり。すごいなぁー、なるっちって」
「鳴釜くんど直球だね? いいなぁ、美優ちゃん。本当に、私にもそんな感じで言って欲しい。その前に私と喋って欲しいー!」
その言葉を聞くうちにみるみる顔が赤くなった。
それから、三日月さんと僕はしばらく顔を赤くしていたのだった。
そして、僕らは観光に出発した。
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