旅館でぶつかった美少女を好きになってしまいました

ともとも

第1章 三日月 美優との出会い

家族旅行編

第1話 美優さんとの出会い

 ドンッ!!!


 その音と共に僕は倒れる。


「ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」


 その声で僕は顔を上げると、目の前にとてつもなく可愛い美少女がいたのだある。


 なにがあったかと言うと、このことが起きる2時間前まで遡る。

 


 


 僕こと、鳴釜 蒼なるかま そうは、父さん、母さん、姉のあおいと妹の真凛まりんと温泉地に旅行に来ていた。その中でも三日月旅館に泊まっている。

 とは言っても、「父さんもいることだ

し、土日でのちょっとした外泊気分を味わおう!」と、母さんが言い出して、来た程度なので大した遠出はしていない。なんならとても近所である。

 そして、今は旅館に荷物を持ってきて、一息ついたところである。

 

「葵、真凛! 温泉行くわよ!」


「「おー!」」


 温泉大好き組の母さん含む女子一堂はさっさと僕たちを置いて温泉に行く。

 僕たち男が重い荷物を持たされ、ぐだーとへばっていたら置いていかれる。

 なんという始末だ。


「父さん、また僕ら置いていかれたね」


 僕より、たくさんの重い荷物をもたされ、再起不能になりかけている父さんに言う。


「……もう、いつものことじゃないか…。慣れたよ」


 なんとか絞り出したような声で言う。

 

「基本家に帰って来れない父さんがいたから旅行に来ているはずなのになぁ…。主役が置いて行かれてどうするんだよって話よなぁ」


 と、僕はため息をつくが、そんなことしてもなにも変わらない。


「まぁ、もう少し一休みしてから俺たちも温泉に入りに行こうじゃないか」


 そんな短時間でこの状態治るんだ!? まぁ、父さんがそう言うなら大丈夫なのか…。なんて思いながら、


「そうだね、父さん」

 

 それから30分程度のんびりした父さんは復活し、僕たちは温泉に向かったのだった。





 それから、お風呂に入りに行ったあとは豪華なすき焼きを食べ、家族揃ってのんびりとしているところに、


「ねぇ、わたしフルーツ牛乳飲みたい!」


 姉の葵が言う。

 これでも大学2年生、20歳である。


「わたしもー」


 妹の真凛も言う。

 こちらは中学1年生、13歳である。昔は可愛かったのに、今では弟をこき使う姉の配下である。


「お母さんも飲みたいなー」


 母さんも乗っかってくる。

 こちらはただのババァ、48歳である。


「じゃあ、ジャン負け買いに行こ!」


 寝っ転がっていた葵が起き上がりながら提案する。


「「いいね!」」


 真凛とババァ、じゃなかった、母さんが起き上がって賛同する。


「蒼と父さんも参加だよ!」


 葵が参加を強制づけてくる。


「「えぇーー」」


「2人揃って『えー』じゃない! フルーツ牛乳飲みたくないの!?」


 まぁ、飲みたくないと言われれば飲みたいよなぁ…。


 ということで、


「「飲みたい」」


 今日は僕と父さんはよくハモるなぁー。お互い重い荷物を持たされたからきっと絆が芽生えたんだ、そうに違いない。

 

「じゃあいくよ!」


「最初はグー!」


 父さん、あれだな?

 そうだ、息子よ。


 目を合わせ、そんなことを示し合わせる。


「じゃんけん!」


 今日こそはうちの女共を働かせてやる! この拳に全てを捧げて!


「ぽん!」


「僕の一人負けだった。」


 なにぃぃ!?僕は1人で落胆する。


「「「やったぁ!」」」」


 母さんたちはバンザイしている。


「すまんが、よろしくな!」


 裏切ったなぁ…! そして、グッジョブすんな!

 父さんもニコッと笑いながら言ってきた。

 そうだ、父さんとの絆なんてあるわけないんだ。僕は父さんにも嵌められたんだ。なんて僕は愚かなんだ…。


「じゃあ蒼、よろしく〜」


 布団に寝転がっている母さんが言う。


「はい…」


 と言うわけでジャンケンに負けた僕は一人で旅館にある自販機まで買いにきている。


 フルーツ牛乳5本も持ってるやつって、変に思われないかなぁ…。


 そんなことを思いながら帰っていると、


 ドンッ!!!


 前から急に出てきた人にぶつかってしまった。


「いってぇ…」


 僕は無意識に呟く。


「ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」


「あ、いや、全然大丈夫ですぅ?」


 目を開けながらそう言うと、目の前には見たことのないような美少女がいた。旅館用の白い浴衣に後ろで包まれたポニーテールの髪型、そして黒髪で超清楚系の美少女。

 家族以外にはコミュ障の僕は最後に声が上擦ってしまった。


「本当にすいません。怪我はないですか??」


 そう言って手を差し伸べてくれる。

 

 この子は天使か!? 


 そんなことを思いながら手を取る。


「は、はい、なんとか…」


 といって、彼女に笑いかけるが、彼女の顔はあぁ…、と、落ち込んだ顔をしていた。


「ど、どうかしたの?」


 コミュ障(僕)が恐る恐る尋ねると、


「持ってたフルーツ牛乳が全部割れちゃいましたね……」


「え、あ、ほんとだ…」


 手に持っていたフルーツ牛乳が全部割れてしまっていることに僕は指摘されて初めて気づいた。


「と、とりあえず従業員さんに言って何か拭く物貰ってくるね」


「わたしも手伝ますね」


 なんて優しい人なんだ!

 とか、考えながら、従業員を呼びに行き、瓶のかけらなどの全てを処理し終えた。


「「すいませんでした!」」


 最後に2人で頭を下げる。


「そんなに謝らないでください。大丈夫ですから」


 従業員さんは笑いかけてから、去っていった。


「改めてごめんなさい! フルーツ牛乳5本弁償させて下さい!」


 なんて律儀なんだ。こんな可愛い子に買ってもらえるなんて…、いやいや、ダメだ。こんな子にお金を使わせるわけには。


「いやいや! 弁償だなんて、全然大丈夫ですよ!?」


 どうせ裏切り者の父さんの金なんだし!


 みたいに思っていると、


「いいえ! 弁償させてください!」


 このままだとどちらも引きそうにない空気を醸し出していると、


美優みゆ、どうしたの!」


 そう言って話しかけてきたのは、この美少女にとても似ている、20代ぐらいの女性だった。お姉さんだろうか。


 それにしても、この人の第1印象は怖いで確定だな…。


「あ…、お母さん。この人とぶつかっちゃって、この人の持ってたフルーツ牛乳を割っちゃったんです」


 お母さん!? え、いや、若すぎません?

うちのババァとは大違い…。


「なにしてるの、美優! ほんとにあなたって人はドジなんだから…。すいません、お客様。うちの娘がご迷惑をおかけしたようで」


 お客様? ん? とりあえずそのことは置いておいて、


「いえいえ、こちらこそ考え事をして歩いてたものですから、娘さんにぶつかってしまって申し訳ありませんでした…」


 そう言うと、美少女のお母さんは驚いたような顔をする。

 そんな顔されたらこっちまでびっくりするんですが…、


「お客様若いのにしっかりしていらっしゃいますね…。うちの娘も見習ってほしいわね…って! お客様、怪我してるじゃないですか!?」


「え! うそ!?」


 それには美少女も乗っかってくる。

 その言葉に美少女の母さんの眉毛がピクッと動いたのと、表情が少し変わったことを、僕は見逃がさなかった。


「え、ほんとですね…」


 美少女の存在が大きすぎたせいか、全然気づかなかったが、足から血が垂れていた。自分でも痛みを忘れるほど美少女のことを見ていたということか…。

 僕がふと横を見ると、美少女のお母さんは驚いた顔をしていたが、一瞬で元の顔に戻り、


「手当しないといけないですね。部屋に絆創膏とかいろいろありますので、こちらにいらっしゃって下さい」


 美少女の母親はそう言う。


「え、いやそれは…」


「お願い、君を怪我させて下さい。その上治療もできなかったら私…」


「美優、あなた…、え?」


 小さな声でポツリと美少女のお母さんがそう言ったが、僕はなんのことなのか分からなかった。

 今にも涙を流しそうな目でこちらを見てくる。そんな目されたら断るのも申し訳なくなるな…。


「すいませんが、よろしくお願いします」


「ありがとうございます」


 と言うことで、今日会ったばっかりの美少女の部屋に招かれることになったのであった。

 部屋といっても旅館の部屋だけどね?



 〜後書き〜


 みなさんこんばんは!お久しぶりの方はお久しぶりです!初めましての方は初めまして!

 この作品にお目通りしていただきありがとうございます!

 作品の更新頻度なのですが、不定期とさせていただきます。(リアルが忙しいため)

 もし誤字、脱字を発見された方は報告していただけると幸いです。

 もし少しでも続きが気になったよーって方は応援や作品フォロー、作品へのお星様評価、感想をよろしくお願い致します!

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