転校した先は変わった学校でした!!〜卒業までに10人の嫁を作らなければいけません〜
ユウキ・アカツキ
序章
第1話久遠凌斗という人間
chapter000
『凌斗くんは、生きてよ』
そう……昔、誰かに言われた気がする。
誰だったか……どんな人だったか……それは、よく分からない……けれど、僕は……
その人の正体を知りたいと思ったことは無い……
だって、知ったところで悲しいだけじゃないか。
生きろ……なんて、言った人はもう、会えることもない、そんな気がする……この言葉はほんとに僕の中では呪いのようだとしか思えない。
その証拠に……
掴んだものは必ず失われる。
離れていったものは取り戻すことなんて……出来やしない。
欠けた心は……戻すことなんて出来ない……
そう……この悲しい現実で教えられたようなものなのだから虚しいな……って思ってしまう。
どうしてなのかな……
僕はいつから……こんな風に冷たくなってしまったんだろう……
冷静に……全てを考えるようになったんだろうね……
ほんとに、どうしてなの?
姉さん……
chapter001
「朝、か……」
眠りから覚めた僕を朝のキラキラした日差しが眩しく差し込んでいて……僕を夢から現実に引き戻すかのような感じがして……すごく、すごく……切なく思ってしまった。
この僕は……久遠凌斗は身体を起こし……今日は何があるか、何が必要か……
色んなことを整理し始める。
そういえば……姉さんが来るとか来ないとか言ってたし、夜ご飯の仕込みとかもしておかないといけないな。
もう、こんな時間か……
早く準備をするとしますか……
「今日も頑張れ……久遠凌斗」
chapter002
僕はいつも朝早く起きてしまう。
まあ、それはこの家には家族が誰も居ないからだ。
いつから居なくなったのか……
それは、覚えてはいない。
何故かというのも……よく分からない……
というか、そもそもの話だが……僕は中学校の事なんてあんまりよく覚えていない。
全然、全く……記憶をしてない。
というか……記憶が無いといえばいいのだろうか。
中学校入学以前からの……ということなのだが。
それは……今はどうでもいいか。
「制服に着替え、よし。カバンに教科、よし。朝ごはん用意、よし。夜ご飯の仕込み、よし。よし、食べよう」
目の前の用意された食事……パンと目玉焼きにベーコン……
うん……やっぱり、こうして見るとほんとに美味しそうに見える。
早く食べたい……いや、食べよう。
手を合わせて……
全ての食材に感謝を込めて……
「いただきます」
うん……美味しい。
パンのカリカリ感に、元のふわふわがあるからこそ……こんなにも美味しく思えるとは……料理というのは奥が深い……
今度、愛莉さんに作ってみよう。
喜ばれると思うし……いやむしろ喜んでほしいという気持ちが強いけれど……
というか、そう思うのはなんでだ?
まあ……それは分からないということにしておこう。
「目玉焼きも、カリカリで上手く出来たな……」
僕の好きな半熟、姉さんも確か好きだった気がする。
どうして僕の好きな物も好きになろうとするのか……
不思議な姉だほんとに、いや不思議というか……なんというか……
僕がやった事をやりたいと言い始めたり、僕の好きだったって言ったものを好きとか言ったり……と色んな面において僕のことが好きすぎる。
ほんとに、成長してほしいくらいだ。
まあ……姉らしいといえばらしいんだが……
「ご馳走様でした」
ふぅ……さて、と……
これから何するんだっけ。
えーっと……えーっと……そうか、あれだ……
学校だ。
忘れっぽいというか、不意に忘れやすいというのも嫌なものだ。
というか……家族がいない、記憶が無い、それと少し忘れっぽい、この不憫な状態でどうして僕は学校という生産性の無いところに行かなきゃいけないのか。
「まあ……めんどくさい、でも……愛莉ちゃんに会えるのならそれでいいかな……」
学校では、孤高と呼ばれ……
実生活は謎に包まれている……か。
まあ……そんな噂が流れていたとしてもそれはしょうがないか……
でも、僕の実生活なんて、ただ料理をしてるだけなんだけど……
それでも謎なのかな?
まあ……僕には友達という友達がいないからしょうがないけれど。
でも、愛莉さんという唯一の友達とも呼べる人が居るからそれでいいだろう。
chapter002
「それじゃ、父さん、母さん……行ってくるよ」
そう、遺影に向かい僕はそう伝えた。
遺影……そう、最初に家族が居ないと言ったがそれはもう二人とも死んだことになっているんだ。
父さんと呼べる人は玄関で銃を持ち、血を流しながら倒れていたところを僕が見つけていたとの事……
それが本当かどうかは、分からないけれど。
でも、脳裏にたまに思い浮かぶその人の姿は血溜まりが出来ていて、左手に拳銃を持ち笑みを浮かべている様子だった。
それが……どれだけ悲しいことかと思うか……
そんなことを今考えても無駄なんだろうなとも思うかもしれないのは僕だけなんだろうけど。
まあ……未だに疑問に思うのは、その父さんの遺体はどこかに消えたということ、そしてなんで死ななきゃいけなかったのか……ということ。
それが一番、気になる部分だ。
母さんは母さんで……
死んだわけではない、けど……父さんが死亡した後に、どこかへ消えてしまった……というのを覚えている。
所謂、失踪だ。
まあ、その失踪後……どこかで死んだ……という話も聞いたが……僕はほんとに信じられなかったな……
でも、その時から記憶がなかったから……涙が出なかった僕はほんとに酷かっただろうな……
「でも、僕は久遠凌斗であって久遠凌斗ではない」
だから、もうこればかりは仕方ない……
それで済ませてしまえるようなことではないけれどそれで済むことなのだ。
ほんとに、自分でも最低だと思うほどの孤高ぶりだ。
だけど、しょうがないじゃないか、僕は僕だ。
だから、今の僕には学校生活を穏便に過ごす……ということをするしかない。
「おーい!凌斗くーん!」
お、この声は……もしかして……
「凌斗くん!おはよう!」
「おはよう、愛莉さん」
目の前に来た人。
茶髪のロングで、とても可愛く……制服を着こなす姿がいかにも当たり前に見えるけれど……それでも素敵に見えてしまう。
僕とは別のクラスだけれど委員長をやっているらしい……僕的にはこの人にはメガネが似合うと思う。
その人こそ
「えへへっ、今日も早いねぇ〜。もしかして寝てないとか?」
「そ、そんなことないよ、ちゃんと早く寝て早く起きたもん」
「ふーん、ほんとかな〜」
やっぱり……愛莉さんは鋭いなぁ……
いや、鋭すぎるにも程がある。
どうしてこんなにも僕のことがわかっているのか……
ほんとに睡眠時間は今日はあんまり取れなかったけど……もしかして、僕のことならなんでも分かるんじゃないか?
「ほ、ほんとだよ……」
「それならいいけど〜」
「あはは……」
誤魔化したら誤魔化しただけ絶対疑われるから……それはそれでやめた方がいいんだけどさ。
だけど……この人……
愛莉さんは……ほんとに僕の中で全てを変えてくれた人だ。
記憶がなくなってて考えることも生きることもつまらないと思ってしまっていた僕の心を愛莉さんが優しく包み込んでくれた。
それだけ僕にとっては特別な存在なのだ。
まあ……あの時のことを考えればほんとに救われたと言っても過言ではないだろう。
その時のことを愛莉さんに言うと、絶対恥ずかしがるから言わないでおくけど。
「凌斗くん?」
「ん?どうしたの?」
「ううん、ただ、またどこか遠いところを見てるような気がして……」
遠いところ、か……
いつも僕は遠いところを見てるような気がする……
それはダメなんだろうなってことは分かってる。
だけど、どうしてこんなにも愛莉さんにそう言われると辛いって思うんだろう……
悲しい……悲しいけれど……でも、それ以上に愛莉さんにはもっと……いいことを言って欲しいなと思う……
それは、上手くは言えないけれど。
「ん?」
「ううん、とりあえず行こっ?」
「うん!」
素敵な人と素敵な日常。
この、ちょっとした事が僕にとっては幸せなのだから。
そう、いつか……愛莉さんにそう言ってみたいな。
でも、どう言われるかは……分からないけれど。
だけど、愛莉さんには僕と一緒にいて……笑顔でいて欲しいな。
そんなふうに今日も今日とで学校に向かおう。
to be continued
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