寿限無双~クソ長キラキラネームをつけられてしまった俺がペンネームを使って人生やり直し。ご隠居が命名のお詫びにくれたチート知識でSランクなろう作家に成り上がります~
1 「熊五郎=単純、能天気」というテンプレ
寿限無双~クソ長キラキラネームをつけられてしまった俺がペンネームを使って人生やり直し。ご隠居が命名のお詫びにくれたチート知識でSランクなろう作家に成り上がります~
蟹場たらば
1 「熊五郎=単純、能天気」というテンプレ
熊五郎「おーい、
寿限無「…………」
熊五郎「寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末・雲来末・風来末、食う寝る処に住む処、藪ら柑子のぶら柑子、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助、出かけちまったのか?」
寿限無「うるさいなぁ。そうまくしたてなくったって聞こえてるよ、父ちゃん」
熊五郎「だったら、さっさと返事をしねえか」
寿限無「変な名前で恥ずかしいから、俺を呼ぶ時は寿限無って呼んでくれって、いつもそう言ってるだろ」
熊五郎「変な名前なわけあるもんか。寿限無は
寿限無「どれかひとつにしろよ。なんでいくつも並べてんだよ」
熊五郎「どれにしようか悩んじまったんでなァ。いっそ全部つけちまえばいいかと思って」
寿限無「そのせいで、息子が現在進行形で悩んでんだよ」
熊五郎「なんだ、また『長い』とか『覚えづらい』とか言われたのか?」
寿限無「今日は『キラキラネームじゃなくてダラダラネーム』ってからかわれたよ」
熊五郎「まあそう文句ばかり言いねえ。長い名前のおかげで、よかったことだってあるんだから」
寿限無「へぇ、どんなことだよ? 先生が呼ぶのを面倒くさがって指名しないことか?」
熊五郎「おめえがまだ小さかった頃のことだ。『寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末・雲来末・風来末、食う寝る処に住む処、藪ら柑子のぶら柑子、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助くんに殴られた』って、近所の子供がうちに駆け込んできてな。『頭にコブができた』って泣くから見てみたんだが、そんなもんどこにもなくて。
そしたら、その子が『あんまり名前が長いから、もうコブが引っ込んじまった』つって。長い名前のおかげで、そういう笑える
寿限無「何の話だよ」
熊五郎「他にも、友達が新学期におめえのことを迎えに来るんだが、『名前が長いから夏休みになっちまった』とか、川におめえが落ちたって俺に助けを求めに来るんだが、『名前が長いから溺れ死んじまった』とか、そういうオチで
寿限無「だから、何の話だよ」
熊五郎「親が知恵を絞って考えた名前にケチつけるなって話だよ」
寿限無「まぁ、こってるのだけは認めてやるよ。海砂利水魚だの、藪ら柑子だの、どう考えても父ちゃんが普段使うような言葉じゃないからな」
熊五郎「そうだろう、そうだろう。おめえのために、どんな名前がいいか、わざわざ聞きに行ったんだからな」
寿限無「誰のところに?」
熊五郎「そりゃあ、決まってるだろ。横丁のご隠居だよ」
寿限無「へー、あの人、物知りだって聞いてたけど本当だったんだな」
熊五郎「ああ、ご隠居は年の功でなんでも知ってるからな。ギターに麻雀、釣り、筋トレ、登山、キャンプ……」
寿限無「それだとアニメにすぐ影響を受けるオタクみたいに聞こえるけどなぁ」
熊五郎「確かにアニメも詳しいみたいだけど、それだけじゃないぞ。漫画やゲーム、特撮、ライトノベルにも詳しいからな」
寿限無「完全にオタクじゃねえか」
熊五郎「ああ、そうだった。ご隠居のことで、おめえに用があったんだった」
寿限無「それで俺のことを呼んでたのか。で、用っていうのは?」
熊五郎「ご隠居のところに届け物を頼まれたんだが、俺は他に用事があってよ。おめえが代わりに行ってくれねえかと思って」
寿限無「届け物? ……まぁ、いいけどよ」
熊五郎「なんだ、今日はやけに素直に言うことを聞くじゃねえか」
寿限無「俺もご隠居と話したいことがあるからな」
熊五郎「なんだよ、一体?」
寿限無「決まってるだろ。名前のことで文句を言いに行くんだよ」
◇◇◇
寿限無「ご隠居、ご隠居。俺です。寿限無です」
ご隠居「おお、寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末・雲来末・風来末、食う寝る処に住む処、藪ら柑子のぶら柑子、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助か。ちょっと見ない内に、また大きくなったなぁ」
寿限無「寿限無って呼んでください。恥ずかしい」
ご隠居「それで今日は何のご用かな?」
寿限無「届け物です。それと……」
ご隠居「命名に
寿限無「うへぇ、なんで分かるんです?」
ご隠居「だてに長生きはしておらんということじゃ」
寿限無「でも、実を言うと、それは父ちゃんの手前で言っただけの建前ですよ。それよりも、ちょっとご隠居に相談したいことがあって」
ご隠居「名前よりも重要なことか。何かな?」
寿限無「笑わないで聞いてくださいね。……実は、俺は小説を書きたいと思っていて」
ご隠居「全然笑うようなことじゃないじゃないか」
寿限無「本当にそう思いますか?」
ご隠居「なんであれ、趣味を持つと生活が豊かになるからな。結構なことじゃあないか。で、どんな小説を書きたいのじゃ?」
寿限無「……う系です」
ご隠居「何だって?」
寿限無「……ろう系です」
ご隠居「大江健三郎系? それとも池波正太郎系か?」
寿限無「なろう系です」
ご隠居「ああ、そうか。なろう系か」
寿限無「ご隠居、声が大きいですよ」
ご隠居「何を恥ずかしがっておるんじゃ。オタク的な趣味なんて、儂の若い頃ならともかく、お主の世代ならそう珍しくもなかろう」
寿限無「そういうこともありますけど、ここは小説家になろうじゃなくてカクヨムなんで……」
ご隠居「しかし、掲載誌が百合姫でも電撃大王でもキューンでも、日常系なら全部きらら扱いされたりするからの。それっぽい作風がひとまとめにされるのはよくあることじゃ。だから、初出がカクヨムでもアルファポリスでもラノベレーベルでも、それっぽければなろう系と呼んでも問題あるまい」
寿限無「ご隠居は本当にオタクだったんですね…… だから相談に来たんですが」
ご隠居「なろう系を書きたいということじゃったな。それは小説の書き方を教えてほしいということか?」
寿限無「いえ、一応基本は分かってるつもりです。小説自体は、前からちょくちょくネットで書いてたもんで」
ご隠居「ほう、そうだったのか。そんなに創作に興味があったとは知らなかったな」
寿限無「だって、名前があれでしょう? そのせいで、ペンネームとか芸名とかに憧れがあったんですよ」
ご隠居「なるほどのう。ちなみに、なんというペンネームなんじゃ?」
寿限無「
ご隠居「こういうことは言いづらいが……正直儂は死ぬほど好きなセンスじゃ」
寿限無「で、普段は柄原斬流名義で、能力バトルものを書いてるんですけどね、これがまあ読まれなくって。いくら趣味でやってるとはいえ、これじゃあ文章にしてネットに上げるのも、頭の中で妄想だけするのも大して変わらないと思い始めたわけです」
ご隠居「それで人気のあるなろう系に挑戦してみようと考えたわけじゃな」
寿限無「こんなことを言うと、自分の実力不足を棚に上げるなと怒られちまうかもしれませんが……」
ご隠居「いやいや、実際ネット小説は数が多い上に玉石混交で、当たりを探すのが大変でな。ストーリーの様式から一定の面白さが見込めたり、設定を一から覚えなくてよかったりするような、テンプレ作品に読者が集まりやすい傾向にあるのじゃ。
だから、テンプレを書けば簡単に人気が出るというわけではないが、それでも非テンプレを書くよりも読まれやすいのは間違いないぞ」
寿限無「へえ、そういうものですか」
ご隠居「それに実力不足だと思うなら、尚更テンプレを書くべきかもしれぬぞ。落語家だって、最初は師匠に教わった通りに演じて、そこから徐々に演技や
寿限無「ただ俺は普段ランキングを見ずに、検索とかで作品を探してるもんで。いまいちそのテンプレっていうんですか? なろう系のお約束みたいなのがよく分からなくって」
ご隠居「それを儂に教示してほしいと、そういうことか?」
寿限無「ええ、なんとかお願いできませんかね」
ご隠居「いいじゃろう。読者としては、読む作品が増えるのはありがたいことじゃからな」
寿限無「本当ですか?」
ご隠居「うむ。名前の件では、寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末・雲来末・風来末、食う寝る処に住む処、藪ら柑子のぶら柑子、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助には迷惑をかけてしまったしのう」
寿限無「そう思うならフルネームで呼ばねえでください」
ご隠居「なろうテンプレといえば、やはり異世界ファンタジーじゃろうな」
寿限無「異世界ファンタジー?」
ご隠居「世界観は中世、厳密には近世くらいかもしれんが、中世ヨーロッパ風でな。それに加えて、モンスターやダンジョンがあり、それを剣と魔法で攻略する冒険者という職業がある……という感じじゃ」
寿限無「ああ、聞いたことありますよ。ナーロッパってやつですよね」
ご隠居「それは基本的に蔑称だから使い方に気をつけてほしいが……あとはステータスとかスキルとかを出す場合もある」
寿限無「ははぁ、なんだかゲームみたいですね」
ご隠居「なろう読者の大半は、子供の頃からゲームに慣れ親しんできた世代じゃからの。実際、ウェブ小説では異世界ファンタジーと並んで、VRMMOも人気ジャンルになっておる」
寿限無「他にはどんな要素がありますか?」
ご隠居「奴隷制があったり、亜人差別があったりするな。それで主人公が奴隷や亜人の美少女を受け入れることで、彼女たちがヒロインとなるのじゃ。
この手の設定がない作品でも、主人公は大抵モテモテのハーレム状態になっておる。まぁ、モテたくない男なんかまずおらんからな」
寿限無「今度はラブコメみたいですね」
ご隠居「だから、そっちも人気ジャンルのひとつじゃ」
寿限無「つまり、ゲームっぽさのある中世ヨーロッパで、モンスターを倒したり、女の子たちといちゃついたりしたらいいわけですか?」
ご隠居「それだけでは、せいせいラノベ風ファンタジー止まりじゃろう。なろう系と呼ぶには、まだまだテンプレ要素が足りぬ」
寿限無「じゃあ、他には何をしたらいいんです?」
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