12.試験結果と打ち上げパーティー
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時間はあっという間に過ぎていき、気づけば試験は終了していた。
試験から三日後、その成果は発表された。
「キリヤ、キリヤっ! 今日、結果、発表!」
「知ってる。行こっか」
「うんっ!」
初めての試験結果にわくわくしているのか、リリアはいつもより興奮気味だ。キリヤはリリアの気持ちを理解しているので、今日は何も言わなかった。
「あっ! 順位、表、あった、よ!」
多くの人混みの視線を集めている紙を見つけ、リリアはキリヤに報告する。
「ん、そうだね」
「わたしたち、の、順位、どこ、だろう?」
「上から数えな」
「? わかった」
何故上から数えた方が早いのか、リリアはまだ理解していない。
「えっと、キリヤ、キリヤ……あっ、キリヤ、あった!」
「何位?」
「一位! キリヤ、すごい!」
リリアは拍手する。
「ん、どうも。……でもリリアもすごいよ。同率一位だし」
「えっ……? あっ、ほんとだ」
キリヤの名前の下に、リリアの名前も書いてある。二人の点数は、900満点中900満点だ。一体どうしたらそんなすごい点数を取れるのやら。
「あーあ、やっぱりキリヤもリリアもすごいな」
「! レイくん!」
「…………」
そう思ったのはレイだけではなさそうだ。
「さすがです、キリヤ様、リリア様」
「尊敬するよ」
「ミズキさん、ライガくん!」
「ほーんと、頑張ったね、リリア」
「チユに私も同意する。二人ともすごい。羨ましい」
「チユ、フィーネ!」
いつの間にか、ファーストクラスのみんながキリヤとリリアの周りに集まって来た。周囲の人々はその光景に動揺する。
「!? ファーストクラスだ!」
「すっげぇ! 初めて見た!」
「みんな成績はトップ10だ……!」
今回の成績は、
一位、キリヤとリリア
三位、レイ
四位、ミズキ
五位、フィーネ
六位、イツキ
七位、チユ
だ。全員が十位以内に入っている。今回のテストによるファーストクラスの人員変更、また首席変更はない。
「みんな、すごいね」
「いや、俺らよりも順位の高いリリアの方がすごいだろ」
「そう、かなぁ?」
「そうだよ」
「そうですよ」
「リ〜リア〜!」
「わわっ、イツキくん……!?」
「おめでと、リリア。今日も可愛いね、大好き」
「ふぇっ!?」
「おいイツキ、リリアに触るな」
キリヤはリリアに触れるイツキに
そんなキリヤとイツキを心配するリリアに、ミズキはリリアにある提案をする。
「リリア様。試験も終わりましたし、打ち上げパーティーでもしませんか?」
「打ち上げ、パーティー?」
「はい。女子会もしてみたいのですが、キリヤ様には許してもらえなさそうなので」
「……そうかなぁ?」
「まぁ、まずは打ち上げパーティーをするところからがいいかと」
こうしてミズキの提案により、打ち上げパーティーをすることに決定した。
「では、かんぱーい!」
「かんぱーい!」
ミズキは決めたことはすぐに実行するタイプなので、その日の部活動の時間に打ち上げパーティーをすることになった。
皆、それぞれ好きなように会話をしていた。
「ん、これ美味しい! 誰が作ったの?」
「わたくしです」
「ミズキすごい! 美味しい! 今度作り方教えてくれない?」
「もちろん。ではわたくしにも前にチユが作ってくださったお菓子の作り方を教えてくれませんか?」
こんな暖かな会話もあれば
「ちょっとキリヤ、リリアの隣は俺って決まってるの」
「はぁ? 貴様のような奴が隣にいたら何が起こるかわからないだろ」
「いや、それはキリヤも同じだと思うけど?」
「レーイ?」
「……俺が悪かったです」
キリヤVSイツキのバトルに巻き込まれる可哀想な者もいた。
そんなパーティーを見ていると、リリアは自然と笑みが溢れるのだった。そんなリリアに、フィーネが話しかけた。
「リリア」
「フィーネ。どうした、の?」
あまりフィーネとは話したことのないリリアは、少し緊張した。
「たいしたことではないんだけど……前に同好会イベントでさ、リリア、服、違うの着てたじゃない?」
「うん。それが、どうか、した?」
同好会イベントでリリアが着ていたのは、天使をイメージした白をベースカラーに作られたワンピースだ。
「めっちゃ、似合ってた」
「? あり、がとう……?」
「リリアなら何着ても似合うと思うの」
「……そう、なの、かなぁ?」
「うん。絶対そう」
リリアはフィーネが何を言いたいのか理解できない。リリアもフィーネも静かな方なので、会話に進歩が見られない。
「だからね」
「う、うん」
フィーネはリリアに近づき、両手を合わせてお願いした。
「リリアに制服以外の服、着てみて欲しいなぁ」
「…………つまり、は?」
「女子全員でおしゃれしたい」
「……おぉ」
だが、リリアは基本的に制服以外の服をあまり持っていない。キリヤが
「フィーネ、わたし、おしゃれ、な、服、持って、ない」
「それなら大丈夫。
「で、でも……」
リリアは知っている。自分に服のセンスがないことを。
「私が創るから大丈夫。だから、お願い」
「〜〜っ。…………わかった」
「やったぜ」
毎度平常運転のフィーネだが、今のフィーネは目が輝いている。
(そう言えば、お茶会の時もそうだったなぁ)
リリアは未だにフィーネがイツキとの関係を強く強く迫って来た時のことを覚えている。フィーネは恋やおしゃれが好きなのだろう。
「ミズキ、チユ」
「フィーネ、成功した?」
フィーネは右手の親指を立てて「当然」と言い、片目を閉じた。
「なら、始めましょうか。……キリヤ様」
ミズキの呼びかけにキリヤが反応する。
「どうかしたか?」
「調理室とリリア様を少しの間、借りさせていただきます」
「? ……十分だけだからな」
「ありがとうございます」
これで最後の関門であるキリヤの許可が降りた。
「じゃ、リリア、早く行こ!」
「えっ、えっ……?」
「ほらリリア、早く早く」
「楽しみです。……
こうしてリリアはミズキ、チユ、フィーネに押されて調理室に転移した。
「うーん、たまにはイメチェンも楽しいし、明るい服装がいいかなぁ……
「わっ」
チユが
「待ってチユ。リリアほどの体型と身長と雰囲気なら、ゴスロリ系が似合うと思う。……
「わわっ」
今度はフィーネがリリアの服を黒を基調とした、フリルやリボンのついたゴシックロリータに変える。まるでお人形のようだ。
「ケモ耳も可愛いと思う!
「いや、ここは敢えてカジュアルに……。
「ひゃあっ……おおっ……」
テンポよく
だがさすがに十着目に差し掛かろうとした時、リリアの様子も考慮して、ミズキが二人に静止をかけた。
「チユ、フィーネ。お気持ちはわかりますが、あまりやり過ぎるとキリヤ様に叱られてしまいます。イツキであれほど怒るのですから、そろそろやめた方がよろしいかと」
(ミズキさん……!)
この着替え地獄から抜け出せると安堵したリリアはほっと息を吐いた。
「むぅ〜〜。わかってるんだけどさ〜」
「……今度の楽しみにとっとく」
「懸命な判断です」
ミズキはそう言うと、リリアに言った。
「リリア様。最後にわたくしから一度だけ、試着をさせていただけますか?」
「! わかり、ました」
「ありがとうございます。……
そうしてミズキが選んだのは、この服だった。
「! ……リリア、素敵」
「すごく似合ってる」
襟に花や葉の刺繍が施された白のブラウス。濃く落ち着いた青いスカート。三本のラインが左右ともに引かれた白のハイソックス。全体を引き締める黒のパンプス。
清廉潔白なリリアによく似合っている。
「……おしゃれ」
「そう言っていただけて嬉しいです。少し髪を結ってもよろしいでしょうか」
「! お願いします」
ミズキは手慣れた手つきでリリアのふわふわとした髪を結い上げる。サイドに一本ずつ三つ編みをし、それを後ろの高いところで繋ぎ、ハーフアップにした。
いつもは全て下ろしているが、少し結ぶだけでも印象はガラリと変わるものである。
(わぁ〜〜!)
「どうでしょうか」
「すごい、です」
「ありがとうございます。……あ」
「? どうか、しましたか?」
ミズキは何か思いついたようだ。
「あの、もしよろしければ……」
ミズキはリリアに小さく耳打ちする。それを聞いたリリアは目を軽く開くとーー「やって、みたい、です」と言った。
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