第52話 お祭りの姉
~姉視点~
「お待たせ~。」
「お待たせしました。」
待ち合わせ場所に到着すると、すでにちーちゃんと萌ちゃんが待っていた。
「大丈夫ですよ!うちらも丁度着いたところなんで!」
「それにまだ集合時間前よ。別に遅れたわけでも無いのだし、気にしないでちょうだい。」
「それなら良かった。…それにしても皆浴衣似合ってるねぇ。お祭りの途中でスカウトされちゃったらどうする?」
「お祭りでそんな人がいるわけないでしょ。」
「ぶ~、ちーちゃんは夢がないなぁ。」
「はいはい、夢がなくて悪かったわね。」
「…あれ?あっ、美優とお姉さん同じピアスしてますね!とってもお似合いです!!」
萌ちゃんが私達のピアスを話題にしてくれた。気づいてくれて嬉しかった。
「あっ、気づいちゃった?えへへ、そうなの。お揃いのピアスしてきたの。」
「へぇ、お揃いのピアスなんていいじゃない。二人とも似合ってるわ。」
「でしょでしょ?気づいてもらえてよかったね美優!」
美優に笑いかけると、彼女も微笑み返してくれた。
「そうですね。お似合いと言ってもらえて嬉しいです。」
「うんうん!それじゃ早速出店行こ!出店!!美味しいのが私達を待ってるよ!!」
私は出店の食べ物に興味があるんだ!美味しいものをいっぱい食べたい!
「最初は何を食べようかなぁ~。やっぱりたこ焼きとかかなぁ~。でもでも、チョコバナナとかリンゴ飴とかも良いよなぁ~。…じゅるり。」
「はぁ…アンタの頭の中は食べ物で埋め尽くされているんでしょうね。」
「あはっ、お姉さんらしくていいじゃないですか!」
「お姉さま、あまり走ろうとしないでください。怪我してしまいますよ。」
「ほらほら皆早く!!美味しいものが無くなっちゃうよ!!」
繋いだ美優の手を引きながら皆を急かす。すぐ近くから太鼓の音が聞こえる。テンション上がってきた!!
―――――
「むぐむぐ…ごくん。ん~!これもおいしい!!ねぇねぇ、次はあっちの出店に行こ!」
「アンタどんだけ食べるのよ…。」
「あはは…胃袋が無限ですね…。」
すでに何種類もの食べ物を買っている。当然私の手では持ちきれないので、美優にも手伝ってもらっている。
「お姉さま、口の横がソースで汚れていますよ。拭きますので少しだけじっとしていてください。」
「ん!」
顔を突き出すと、美優が口の横を拭いてくれた。
「……はい、綺麗になりました。あまり急いで食べると、喉に詰まらせてしまいますよ?」
「ありがと!分かった!!」
「それと食べ物がたくさんなので、一度休憩ポイントで食べてからまた行きましょうね。」
「は~い。」
「……アタシには二人が親子に見えてきたわ。」
「奇遇ですね!うちもです!」
「ねぇ聞こえてるよ???」
そうして皆で近くにある休憩ポイントに向かう。
―――――
「ん~、おいしかった!!じゃあそろそろ行こ!!」
買った食べ物をペロリと平らげたので、そろそろ出発しようと伝える。
「ホントよく食べるわね…。アタシはもう少し休憩したいからここにいるわ。」
「ごめんなさい!うちもここにいます!履きなれない下駄で足がちょっと痛くて…。」
「え、あ……ごめん。流石に自分勝手だった…。もうちょっとここにいよっか。」
浮かれすぎて周りが見えず、あまりにも自分勝手だった。皆に申し訳ないな。
「良いのよ別に。お祭りは楽しんだもん勝ちでしょ。」
「そうですよ!うちらも後で合流するので、置いてって大丈夫です!」
「でも…。」
せっかく四人で来てるのだ。皆で一緒に回りたい。
「じゃあほら、この後に花火が始まるじゃない?動けないアタシたちの代わりに場所取りをお願いしていいかしら。」
「…うん、わかった。最高の場所を見つけてくるよ。」
「お姉さま、私もついていきます。」
「ん、ありがと。じゃあ行ってくるね。」
「はい!お願いします!」
美優を連れて花火がよく見えそうな場所を探しに行く。数分間彷徨うが、なかなかイイ感じの場所が見つからない。
「ん~、なかなか見つからないねぇ。」
「そうですね。どこも既に取られてしまっています。」
「困ったもんだ…ってん?あっ、やば。」
たまたま自分の浴衣に視線を下ろすと、着崩れしてるのが目に入った。
「ご、ごめん美優、着崩れしちゃってるからちょっとお手洗いで直してくるね。」
「分かりました。近くのお手洗いは…あそこですね。私はこちらで待っていますね。」
「ごめんね、出来るだけ早く戻ってくるから!」
「ゆっくりで大丈夫ですよ。いってらっしゃい。」
美優を置いて、お手洗いに向かう。幸いにもあまり人が並んでいなかったので、すぐに入ることができた。
向かう途中、建物の陰でちゅっちゅしてる男女がいてびっくりした。通りから見づらいとはいえ、外でいちゃこらするのってすごいな…。
個室に入り、15分くらい掛けて着崩れを直す。出来るだけ急ぎはしたが、時間が掛かってしまった。
「ちょっと時間かかっちゃったな…。急いで戻らなきゃ。」
お手洗いの外に出て、美優が待っている方へ顔を向けると、彼女の前に同年代くらいの三人組が立っているのが見えた。男一人に女二人の組み合わせだったので、ナンパではないだろう。
だが、なにやら美優の様子がおかしい。先ほどまで笑顔だったはずの美優が、今は顔を俯かせている。
妙な胸騒ぎがした私は、急いで美優の元へと向かった。
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