第48話 寝起きの姉に甘えられる妹

〜妹視点〜


 お泊り会二日目の朝。お姉さまを除く私達三人はすでに目を覚ましており、すやすやと寝ているお姉さまを見つめていた。


 お姉さまは私にぎゅっと抱きついて、とても幸せそうな顔で寝ている。そのため、私は現在身動きが取れないのだが、この状況は幸せなので問題ない。つまりウィンウィンだ。


「ふふっ、ぐっすりと眠っていらっしゃいますね。」


「ホントびっくりするくらい熟睡してるわね。昨日の夜はあんなに騒いでいたのに。」


「あははっ、そうですね!でも、熟睡しちゃうくらい美優に抱きついて寝るのが安心できるってことじゃないですか?」


「それは…とても嬉しいですね。」


 お姉さまの髪を撫でながら思わず微笑む。


 寝る前は私だけがお姉さまを抱きしめていたはずだが、目を覚ますとお姉さまも私に抱きついていた。だからだろうか、今日の目覚めは人生で一番良いものだった。


「…ねぇ、アンタ結構強く抱きしめられてるけど、苦しくないの?」


「全く苦しくありません。むしろとても幸せです。…あっ、幸せすぎて苦しいです。」


「…はぁ。まぁそれなら…良かったわね…。」


「うんうん、愛だね!」


「はい、愛です。ですが…流石にそろそろ起こしましょうか。」


 私は何時間でもこのままの体勢でいられるが、ここは萌の家だ。非常に残念ではあるが、そろそろ起こしたほうがいいだろう。


「…お姉さま、そろそろ起きてください。」


 抱きつくお姉さまの肩を揺らして起こそうとする。


「んぅ…。」


 少しだけ唸ったお姉さまは抱きつく力を強め、より深く顔をうずめる。


「お姉さま、もう朝ですよ。」


 私の呼びかけでゆっくりと目を開けたお姉さまは、顔を上げて私と目が合うとふにゃりと笑う。


「…うみゅ………あ〜、みゆだぁ…。ん~…。」


 かと思えば、顔を伏せて頭をぐりぐりと押し付けてくる。まるでネコみたいだ。可愛い。


「ん゛っ……。」


 お姉さまの可愛さに思わず悶えてしまう。動きの一つ一つが愛おしくてたまらない。


「ふぅ…、お姉さま起きてください。もうすぐお昼になってしまいますよ。」


「やぁ…ねむいぃ…みゆとねるのぉ…。」


「んんっ、それはとても素敵な提案ではありますが、萌に迷惑をかけてしまうのでダメです。」


「やだぁ…いっしょにねるのぉ…。」


 私を抱きしめる力と頭のぐりぐりを強めるお姉さま。この人はどれだけ私を虜にすれば気が済むのだろうか。


「…では、この後に家で一緒に寝ましょう。」


「いえ…?ここがおうちじゃ……ハッ!!」


 頭をぐりぐりしていたお姉さまが動きを止め、ガバっと体を起こす。ニヤけた萌と千咲先輩を視界に入れると、みるみるうちに顔が赤くなっていった。



―――――


 目覚めたお姉さまは布団の上で正座し、真っ赤になった顔を両手で覆っている。


「お願いだから忘れて…忘れてください…。」


「ふふふっ、お姉さんって甘えんぼさんなんですね!とっても可愛かったですよ!」


 萌が真っ赤なお姉さまの頬をツンツンしている。


「あれは違うの…。」


「人前であんなにふにゃふにゃになるってなかなか凄いわよね。それだけ美優のぬくもりに安心してたって事かしら?」


 千咲先輩もニヤニヤと楽しんでいる様子。


「もう許して…許して…。」


「ふふっ、お二人ともそろそろ止めてあげてください。このままだとお姉さまが私と一緒に寝てくれなくなってしまいます。」


「ね、寝ない寝ない!!あれは寝ぼけてただけだから!!!!」


「そうですか…。それは残念です…。」


 それならお姉さまが寝ているうちに、こっそりと布団の中へ潜り込むしかない。同意の元で再び添い寝したかったが残念だ。




 さて、そんなこんなで時が経ち、私達は帰る時間になった。


「じゃあ皆さん、ありがとうございました!楽しかったです!またお泊り会しましょう!!」


「うんうん!また絶対やろうね!じゃあばいばい!!!」


「お邪魔しました。」


「また大学で会いましょうね。」


 二人と別れ、お姉さまと帰路につく。


「楽しかったですね。」


「うん!とっても楽しかった!!忘れられない思い出になったね!!まぁ今朝のは忘れてほしいけど…。」


「ふふっ、忘れられないです。」


「むぅ…恥ずかしいのに…。」


 頬が若干赤くなったお姉さまと思い出を振り返りながら道を進む。


 このお泊り会では色々な経験が出来たし、「お姉さまと添い寝」というやりたかったことの一つも達成できた。総じて、とても楽しかったと言える。




 笑顔で思い出を話すお姉さまの顔を見つめながら、また機会があれば四人でお泊り会をしたいと思った。

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