第29話 普通の冒険者

シャスタの森で、ぼくは汗だくになっていた。


「はぁはぁ・・・」


冒険者って体力要るなぁ。

最近ほとんど運動をしていなかったせいか、すぐに息が上がる。


「事務仕事ばかりしてたからなぁ」


汗をぬぐった。

ミレイユは少し離れたところで、岩の上に座りぼくを見ていた。


「初めてなのにそんなに動ける人いないよ。まだ数分しかたってないし」


目の前には大量のスライムの死骸。


「普通は一体倒すのに、時間かかるものなんだけどねぇ」


「え、でも沢山いたからやっつけておかないとまずかったでしょ?」


「そりゃそうだけど・・いざとなったら私も手伝えるし・・・」


スライムから取れた魔石は30個あまり。

つまり30体のスライムを倒したという事だ。


「特に手伝う事ないな。これなら直ぐにランクが上がりそうだ」



****



数時間後、ぼくとミレイユは冒険者ギルドに戻って来ていた。


「スライム討伐してきました。」

受付に魔石を並べて出す。


「え?こんなに?確か初心者でしたよね?」

受付のお姉さんが驚いていた。


「確かにスライムの魔石のようですが・・少々お待ちください。」


「ちょっとすみません。貴方、Aランク冒険者さんですよね?ツカサさんの手伝いをしたのですか?」

受付のお姉さんがミレイユに声をかける。


「いいや、見てただけ。手伝ったら嫌がるから。ていうか、私とだったらもっと強い相手と戦うけど?」


「そうですか・・わかりました。」

納得してくれたようだった。


そんなに信じられない事だったのだろうか?


「ツカサって16歳だっけ?それにこの身長・・150センチくらいかなぁ。子供に見えるからそれで、かもしれないな。」


「ええっ!周りから見てそんな風に思われてたんだ・・。」


「中身は大分違うんだけどな。私の可愛い旦那様」

ミレイユはぼくの腕に抱きついてくる。


まあ、他の人にどう思われてもいいけどさ。

もう少し、身長が伸びてくれることを期待する。

まだ成長期?だし。


ミレイユは160センチ位。

そんなに背が高いというわけでもない。


「ツカサってさ、実は魔法使えたよね?」


「そんなこと喋ったっけ?」


「以前、聞いた気がしたんだよね」


ミレイユの前で使って見せたのは一度だけ。

以前ミレイユが捕まりそうになった時。

剣で投網を切ったように見えるが、その剣に魔法をまとわせて切っていたのだ。

普通の剣では到底切ることが出来ない代物だった。

流石元勇者のパーティということか。


「剣よりも、そっちの方が得意で・・スライムとかあっという間に討伐出来たんじゃないかって・・・」


魔法使ったらあっという間に終わっちゃうじゃないか。

でもそれじゃつまらない。

ぼくは普通の冒険者をしてみたかったんだ。








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