第7話 引っ越し準備

彼らが帰ってから、ミレイユさんが突然切り出した。


「あ、あの責任取ってくれるか?」


何の事だろう。

何故かミレイユさんの顔が赤い。

部屋の壁に寄りかかり、もじもじしている。

かわいいなぁと思いながら見つめていると・・・。


「ぼくがもらう~とか言って。もちろん恋人にしてくれるってことでいいんだよな?」


「も、もちろんです!」


他の事を考えていて、ミレイユさんが何を言っているのかすぐ理解出来なかった。

ぼくは顔が真っ赤になる。




****




草原で彼らは話していた。

前方を険しい山が立ちはだかっている。

魔法使いミンティ、優男剣士アリル、筋肉賢者ヤジロである。


「そういえばさ・・あいつ、今思うとめちゃくちゃ強かったのよね・・。やばかったのかも・・・。」


「さっきの少年か。見た感じは普通だけどな。」

とアリルは言った。


「危ないから催眠魔法とか、もうやめてくれよ?助けられないから。」

とヤジロ。


「流石にもうかけないわよ。今回だけよ。しかもあんた達寝てる時しか魔法かからないし。」


私のオリジナル魔法を破るとかありえないんだけど。


「案外、前の勇者の子孫だったりして、黒髪黒目だったし。」

とアリル。


「ははは、まさか~。」

ミンティは冷や汗を流していた。


「そういうのも面白いかもな?」

ヤジロはからかい半分に。


「そろそろ準備はいいか?一気に飛ぶぞ。」


ヤジロは風魔法を展開し、3人を包み込む。

彼らは風魔法で安全に山を越える。

強度があるので、鳥が衝突しても弾かれる。

ゼノアム公国までは数分での移動だ。




****




「さてと、引っ越すかな。」


「え?」


「ここは彼らに知られてしまっただろう?だから引っ越す。」


「そんな大丈夫じゃ・・。」


「彼らを信じてないわけではありませんが、念のため・・ね?」


ミレイユさんはまだ納得がいっていないようだったが、ぼくは実家に帰ることにした。

親は亡くなってしまったが、家は残っているはずだ。

ぼくの両親は元領主だった。

正直あの家に戻るのはまだ怖い・・・。



その日の夜、ぼくは眠れないでいた。


「どうした?眠れないのか?」


ミレイユさんが心配そうに声をかけてくる。

ぼくとミレイユさんは同じベッドで寝ていた。


「引っ越し先・・両親が住んでいた家でした。少し不安で・・・。」


「そうだよな。しっかりしても、まだ不安だよな。」

後ろからミレイユさんから抱きつかれた。


「あ、あのミレイユさん?胸当たってますけど?」


「こういうの男の人は好きなんだろ?少しは安心した?」


「安心というか・・違う意味で興奮しちゃいそうです・・・。」


「キスしたい?」


「めっちゃしたいです。え?」


ミレイユさんはぼくの頬にキスをした。


「助けてくれたお礼。言ってなかったし。」


「そ、そうですか・・・。」


突然の事にぼくは固まってしまった。

キスされちゃった。

かえって眠れなくなったかも。




次の日、ぼくは引っ越しの準備をしていた。

窓の外を見ると、良い天気のようだ。


「引っ越しをするっていうから大荷物とかを予想していたのだが・・。」


「あ~荷物ありますけど、出しますか?」


「え?」


「アイテムボックス(収納魔法)」


何もない空間から荷物が引っ張り出される。


「アイテムボックスかまた珍しい魔法だな。それなら荷物が少ないのも分かるが・・・。」


アイテムボックスってそんなに収納出来ないはずなのだが。

パーティではよく荷物持ちになると聞く。


「も、もういいから収納していいから・・・。」


目の前に次々と出された荷物。

山積みになっていた。


「元々こんなに物、無かったような気がするけど・・・。」


「あ~備蓄食料も出しちゃいました。ここに入れとくと傷まないですからね。」


「保冷庫代わりに使っているとか贅沢ぜいたくな使い方だな。」


「使えるものは使わないと!ですよ。」


またたく間に荷物が収納されて、小屋の中は家具だけになっていた。


「ちょっと、村長さんに挨拶に行ってきますね。すぐ戻ってきますから。」


バタン


ドアを閉めて、彼は出て行った。


「ふぅ」


「彼、本当に一体何者なんだか・・。」


ミレイユは椅子に腰かけ、テーブルに突っ伏した。

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