道場訓 四十三 組手のあとは汗を流して一休み
「す、凄い……こんな
エミリア・クランリーこと私は、立ち上る
「確かに……このような立派な
キキョウさんも同意見だったらしく、私と同じ周囲を見渡しながら驚きの声を上げていた。
「うちは似たような場所を知っているさかいそんなに驚かんが、それでもやっぱり
リゼッタさんも腰に手を当てて
無理もなかった。
現在、私たちの目の前には
それは巨大な
リザイアル王国の街中にも天然の温泉を利用した巨大な大衆
ヤマト国特有の
上等な木材を使用したいくつもの
他にもこの
けれども、ここは【神の武道場】の外ではない。
ケンシン師匠
そしてこの場所こそ弟子の自分たちが
ちなみにここでは自動的(?)に
「おい、お前たち。いつまでも
私たち3人が入り口で騒いでいると、あとからやってきたケンシン師匠に真後ろから声をかけられた。
「申し訳ありません、ケンシン師匠。すぐに使わせて――」
いただきます、と私が身体ごと振り向いたときだ。
「……きゃあッ!」
私はケンシン師匠を見るなり悲鳴を上げてしまった。
すぐにキキョウさんとリゼッタさんも振り向くと、キキョウさんは「むむ……」と
私たちの目の前には、
細身だが
どれだけ修練と実戦を積み重ねてきたのだろう。
ほとんど
そして
「どうした? エミリア。何をそんなに驚いているんだ?」
一方のケンシン師匠は私が悲鳴を上げた意味が分からなかったらしい。
1人だけわなわなと身体を震わせている私を見て小首を
「驚くに決まっています! ど、どうしてケンシン師匠は
「変な奴だな。お前は風呂に入るときも服を着て入るのか?」
「あっ、それもそうですね……って、違います! 私が言いたいのはどうしてケンシン師匠が私たちと同じ
私の指摘にケンシン師匠は
「そうか……この国では男女とも
ケンシン師匠が私に謝ると、隣にいたキキョウさんが「ケンシン
「我らヤマト人にとって
え? そうなのですか?
私はキキョウさんからリゼッタさんに視線を移した。
「さすがに
するとリゼッタさんは、
「うむ、そうだな。それに師匠を前に弟子が恥ずかしがることなどない」
続いてキキョウさんも
「え? あ、あの……」
1人だけ取り乱している私を見て、ケンシン師匠は「落ち着け、エミリア」と優しく声をかけてくれた。
「俺は向こうのほうの
そう言ってケンシン師匠は、落ち着いた足取りで別の場所へ歩いていく。
「け、ケンシン
「それならうちも気にしまへん。ケンシンさま、うちと一緒に仲良く隣同士で湯に
ケンシン師匠は立ち止まると、顔だけを振り向かせる。
「
またあとでな、と言い残してケンシン師匠は去って行った。
「もう、ケンシンさまは相変わらずクールやな……まあ、ええわ。ようやっとケンシンさまの正式な弟子になれたんや。これからいつでも
何が楽しみなのかは分からなかったが、奇妙な笑い声を上げながらリゼッタさんは恥ずかしげもなく
「まったく、会話の内容だけ聞いているとクレスト教の聖女
キキョウさんは大きなため息を吐くと、
「はて? この
「そこでええんちゃう」
リゼッタさんが指し示したほうには、ちょうど良いサイズの
「おお、まさしく
キキョウさんは脱いだ
リゼッタさんも同じく、脱いだ
「おい、エミリア。お前も早く脱げや。ケンシンさまが言うように、そのままやと風邪を引いてまうぞ」
「あ……は、はい」
私はリゼッタさんに言われるまま
キキョウさんやリゼッタさんに
そうして私たちは近くの
これだけでも気持ちよかったが、そのあと
き、気持ちいい。
全身どころか脳がとろけるほどの
うっかり気を抜くと
「これはいかん……気持ちが良すぎて馬鹿になってしまう」
「ホンマやな。何や
このあと私たちは、
一方、その頃――。
「
俺は1人で
3人のいる
なので会話している3人の声を聞きながら、俺の顔も自然とほころんだ。
たとえ最初の出会いや途中でいがみ合った仲とはいえ、もうあの3人はれっきとした
これから腕を
いや、
なぜなら、俺の正式な弟子になったということは家族になったも同然だからだ。
決して互いを
そうすれば、あの3人はどこまでも強くなれる。
すでに3人ともその
何年後になるかは分からないが、真面目に
もしかすると俺の
かつての祖父も実現できなかった偉大な冒険だが、これは俺1人でどうにかなるものじゃなかった。
少なくともあと3人の仲間はいる。
それこそ俺と
今のところその3人はエミリア、キキョウ、リゼッタなのだが……
そのとき、俺はふと自分をパーティーから追放した別の3人の顔を思い出した。
勇者こと、キース・マクマホン。
サムライこと、カチョウ・フウゲツ。
魔法使いこと、アリーゼ・クイン。
追放されてまだ数日だが、もうあれから何か月も経っているような感覚がする。
そして、もしかしたら俺の
「……あいつら、今頃は何をしているのかな」
俺の代わりのサポーターを雇ってダンジョン攻略をしているのだろうか。
あいつらの
ただ心配なのは、自分たちが強くて偉いと
あの思い込みを消せなければ、おそらく今まで味わったことのないほど痛い目に
そうならないよう
それもリザイアル王国全土を巻き込むほどの最悪な形で――。
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