フューダリズム・スタディーズ
トルティーヤ忠信
序章 封建制の学園
桜舞い散る春爛漫の道を僕は歩いていた。ダボついて糊気の取れていない、まだ袖を数回しか通していない新しい学生服の着心地に時折戸惑いながらも、足取りは軽く心は晴れやかだった。
今日は入学式だった。艱難辛苦の受験勉強の末ついに勝ち取った第一志望校合格、喜びもひとしおだった。
これから先に待っているであろう高校生活の様々な出来事に思いを馳せながら学校へ向かっているとどこからか声をかけられた。
「あなたが
振り返ると1人の少女がいた。均整のとれ揺るぎない自信に満ちた高邁な士風すら薫るかんばせ、華奢だが岸壁に咲く白百合のように凛とした佇まいの少女だった。長く美しい髪は春風にたおやかに撫でられ、立派に着こなした学生服は彼女の纏う雰囲気そのものを表象しているようだった。
「そうだけど、僕に何か用ですか?」
「わたしは私立
彼女、襲ユリは明朗に名乗った。名乗るのは別に構わない、だがどうして僕の名前を知っているのだろうか?僕は特待生でも何でもない、もちろん帰国生でも推薦組でもない。それに彼女は仏曉学園の生徒会長とも名乗ったか、つまり僕の先輩ということだ。これはどういうことなのだろう……。
「単刀直入に言うわ」
彼女は僕の湧き起こる疑問の数々をよそにそうズカズカと物語を先は進めていき、そして僕を真っ直ぐに見据えて、こう言った。
「あなた、わたしの封臣になりなさい!」
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