07 涙を食む

 もう一人たりとも仲間は失いたくなかった。

 一人仲間を失うたびに、残ったメンバーの負担は増えるし、なによりも短期間とはいえ、一緒に死線をくぐりぬけ、泣き、笑いあった友人をうしなうのは何よりもつらかった。

 だからこそ、もう誰にも死んでほしくなかったのに。

 三人でこの地獄から脱出したかったのに、それはかなわなかった。

 マキが戦闘で命を落としたからだ。

 怪物の振るう鋭利な剣が彼女の防具を切り裂き、白く形の良い胸を貫いた。

 倒れた彼女はもう声を出せなかった。

 口の動きは「逃げて」と言っているように見えた。

 いや、ただの願望なのかもしれない。

 俺たちはマキを見捨てて逃げたのだ。追い立てられるように部屋から脱出するとき、振り返った俺の視界に入ったのは首をはねられるマキの姿だった。

 

 次のセーフゾーンでカナコと俺は身体を重ねた。

 先に唇を重ねようとしたのは、カナコだった。

 ただ、俺も負けじと彼女の唇を、身体をまさぐった。

 そうでもしないと正気を保っていることができない。

 彼女の身体は涙の味がした。

 

 ピーピーと音がなり、多くの支給品が届いた。

 アダルトビデオでも見ている感覚なのだろう。

 どこまでも下卑た野郎たちだ。

 今は好きに見ていろ。

 俺たちは、自由を掴む。お前らの目をえぐり出してでも自由をつかむ。


 俺たちは支給された強そうな武具を取り出して、振るう。

 怪物がぐちゃりぐちゃりと潰れていく。

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