04 カツ丼

 ダンジョン内の食料事情はあまり良くない。

 食料は最初に与えられた保存食以外と幾ばくかの塩以外は一切支給されなかった。

 

 「怪物は美味しいし、栄養満点だから、食べてみてね」

 そう言われても、保存食がなくなるまでは、手を出せなかった。

 しかし、保存食が尽きるときはくる。

 あきらめた俺たちは、怪物を食べることにする。

 もとより、俺たちに怪物を食わせたかったのだろう。可食部分や解体法についての情報はふんだんに与えられた。あの醜い怪物どもに食らいつく俺たちを嘲笑うがいい。


 怪物を倒す。

 あたりの安全を確認した上で、解体する。

 頭は有毒らしいので首は必ず切り落とす。

 それぞれの背負い袋につめて、セーフゾーンに運ぶ。

 セーフゾーンには調理施設が用意されているので、そこで調理した。

 醜悪な見た目と裏腹に、怪物はなかなか美味であった。

 

 豚肉のような味わいのそれを食べながら、マキが「カツ丼、食べたい」とつぶやいた。

 小柄でかわいらしい彼女が、カツ丼などとつぶやいたことに俺たちは思わず笑みをこぼした。

 マキが顔を赤らめる。

 「あたし、これでも体育会なんだから。男子部員御用達のお店に皆で行くこともあったし、男の子たちがびっくりするくらい食べられるんだから」

 頬をふくらませた彼女は、可愛らしい。


 そのとき、ピーという音がした。支給品の到着を告げる知らせだ。


 「可愛いマキちゃんにプレゼントだよ」

 部屋の中に声が響く。

 ロッカーの中には揚げ鍋や親子鍋、パン粉や卵、みりんや醤油、それに米と炊飯器が入っていた。

 メインの肉こそはなかったが、はじめての食料支給であった。


 「カツ丼、作れとさ」

 顔を赤らめてもじもじするマキに俺たちは心の底から礼を言った。

 もちろん、マキにだ。

 こいつをよこした人でなしどもには、感謝の気持は微塵もない。

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