第32話 公判・目撃者尋問2
ここで、裁判官から弁護人に質問あり。
「弁護人、今言われた『目撃者と被告人には避けて通れない出来事』とは何ですか?」
「はい。数年前に目撃証人と被告人の間に目撃証人にとって不快と感じる言動が被告人からあったのです。被告人には単なる冗談だったのですが、目撃証人にはかなり不快だったようです。この事が今回の目撃証人の証言内容に影響してると思われます。しかし裁判官、その件の前に現場での尋問を先にさせてもらえますか?」
「分かりました」
「じゃあ証人、次に前屈現場、即ちストレッチ現場についてお尋ねします。最初に目撃した時の貴女の場所はどこですか?」
「受付です」
「次に目撃したのはどこからですか?」
「現場の近くです」
「最初の時は直に見たのですか?」
「いいえ、鏡越しです」
「その時の様子はどうでしたか?」
「被告人が原告のお尻を触ってました」
「どういうふうにでしょう?」
「右手を上下に動かしてました」
「時間的にはどれくらいですか?」
「触った瞬間に近く迄寄って行ったんで、1~2秒くらいです」
「貴女が被告人と原告を直接見た時はどうでしたか?」
「近づいて見た後は離れました」
「近づいて見てから離すまでの時間はどのくらいですか?」
「すぐ声をかけたのですぐ離しました」
「最初の場所と2度めの場所は別の場所ですか?」
「同じ場所です」
神野は唖然とした。
(あまりにも見え透いた偽証。検察官に答えたのとはまるで違う。2度とも何度も触っていたと証言していたではないか!)
「先ほどの検察官の方の尋問に対するのとまるで違った説明ですね。検察官、冷や汗かいてますよ」
「………………」
「さて、ここに現場の間取り図が有ります。腹筋台から貴女のいう犯行現場までの2人の動きを説明してください。裁判官、検察官にもお渡しします。正確に記述して下さい」
「はい……」
弁護人、原告の時と同様に同じ紙を持って目撃者の前に立つ。
「最初に腹筋をした時の両者の位置を丸印で、被告人は”H1”、原告は”G1”と記入してください。後は移動した順にH2,G2のように…」
「こんな感じです」
「有難う。では事務官の方、すみません。またコピー取って貰えますか?」
「はい、すぐに」
神野の脳裏には原告尋問の時の原告の描いた図のイメージが残っている。
数分後、事務官が戻ってくる。
今回もまた、神野は一人蚊帳の外だ。でも、イメージははっきり残っている。
「このG1の位置で被告人が原告の背中を何度も触っていたとの証言でしたね?」
「はい」
「G2の位置がストレッチ現場ですね?」
「はい」
「H2の位置は?」
「被告人がストレッチ現場に行く前に行った位置です」
「その後、H3に移動したのですか?」
「はい」
「貴女が鏡越しに目撃した位置はどこですか?」
「H3です」
「直接目撃したのは?」
「H3です」
「ではもう一度、確認します」
「………………」
「腹筋台では被告人は原告の肩や背中を何度も触っていた。そうですね?」
「はい」
「その後腹筋台を降りた後、原告はどうしましたか?」
「ストレッチ現場へ移動しました」
「鏡には映っていたのですか?」
「はい、映っていました」
「原告はストレッチ現場へ移動する前に何かしましたか?」
「いいえ」
「腹筋台横では前屈とかはしませんでした?」
「してません」
「分かりました。さて、二つ大きな矛盾点があります。気が付きましたか?」
「いいえ」
「証言の信用を失う内容です。原告のお尻を撫でてる回数ですが、貴女は検察官からの尋問に対しては2度とも、『何度も』と証言しました。しかし私弁護人の尋問に対しては2度とも『見た瞬間、1~2秒』と証言しました。わずか15分か20分の間隔でね。これは致命的な偽証ミスです」
ここで川野検察官、焦って発言。
「不慣れで緊張していたと思いますので、混乱したんじゃないかと思います」
「混乱? 一人の人間の人生がかかっているんですよ。『混乱していた』で済む事ではありませんよね」
「そうです。その通りです。証人、弁護人に真実を話して下さい。私も知りたい」
「……………済みません」
「で、もう一つ有るんです」
ここで、裁判官から予期しなかった発言が……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます