「君の旦那さんは俺の妻と不倫しています。良かったら俺と一緒に明るい前向きな復讐しませんか?」エプロン男子の柊くんがサレ妻な私に復讐同盟&溺愛宣言!
天雪桃那花(あまゆきもなか)
第1話 夫の裏切り!? 柊くんのお誘い
夫の裏切り!?
私は明らかに動揺していました。
部活の同窓会で久しぶりに再会した男友達。
――彼の名前は柊くん。
柊くんに告げられたのです。
「小夏、君の旦那さんは浮気をしてる。彼の不倫相手は僕の妻だ」
私の日常がガラガラと音を立てて壊れていくのを、穏やかな日常になんの疑いもなかった私には止められようがなかった。
★☆★
高校の同級生の
日常にはとくに良いこと悪いことの劇的なこともなく、平穏な夫婦生活を送っているつもりだった。
毎日、変わらない。
悩みもなく穏やかにすぎる時間は、充分幸せだって思ってる。
私は
私は不幸じゃない。
……でも。どこかそう言い聞かせてきたのかもしれない。
ここ数年、夫の颯斗くんとは価値観や愛情表現がすれ違い肉体関係はレスだった。
元々、付き合うときには夜の営みには淡白な方だと聞いていたから、そんなに違和感はなかった。
――でも。
……すこしだけ、寂しい……。
夫婦生活も何年も過ぎれば、そういうことも少なくなってくるのかな〜と納得したふりをしてきたのかもしれないねって。
けれど私、気持ちを誤魔化していたみたい。
颯斗くんとは、仲良く手を繋いだり抱き合って眠ったりはする。
だけど、……それ以上はもう踏み込まない。
彼が私の身体の隅々まで深く愛することなんて、この先一生ないのかもしれない。
子供は欲しかったし、結婚したら当然とばかりに子供を授かって親になって、家族が増え、楽しくって賑やかで明るい生活になるって信じてた。
私の気持ちだって。そのうち自分の母親みたいに『お母さん』ってポジションにシフトチェンジしていくのかな、なんて思ってた。
いつか、夫の颯斗くんにとっても一人の女性っていう見方より、妻より母親に自分の子供を一緒に育て慈しむパートナーって感じになるのかなって。
結婚前だって漠然と、愛情の種類だって時を経たら、恋人のいちゃいちゃ甘い関係から家族のあったかい愛情に変わっていくのはしかたないのかと、どこかで思ってたことがあった。
でも、それはとうぶん、いや随分先の人生のことだと思っていた。
★☆★
柊くんに連れられ入ったお洒落な隠れ家っぽいバーは、私には場違いな気がした。
私も夫の颯斗くんも、もともとそんなにお酒が飲めない体質なので、お酒をメインに味わうお店には寄り付かなかった。
素敵だけれども、このバーはどこか異国の地のお店みたいで。
こうして柊くんと来ているのも、自分の現実に起きている実感はなくって。テレビの中のドラマのひと場面みたいに思える。
……落ち着かないな。
年齢ばかりは大人になったというのに、こういうお洒落スポットな場所はほとんど初めてでぎこちなくなる。上手くは立ち振る舞えない。
私は圧倒されて、雰囲気に飲まれ尻込みしてる。
しっとりとした雰囲気の店内、照明の光量が極力抑えられた淡いダウンライトが幻想的に演出してる大人な空間。
夜景の見える窓際にはグランドピアノが置いてあって、生演奏のピアノの静かな音楽が軽やかに流れていた。
慣れないバーのカウンターで、隣りの席に座る柊くんが心配そうに私をじっと見つめてる。
人懐っこい瞳、誰もがハッと目を奪われる美形だけれど、気さくな彼。
彼は数年ぶりに会ったって、変わらない。
私は会わなかった時間が彼の良さを変化させなかったことにホッとしてしまう。
……柊くんは優しい。
「小夏? 大丈夫? ……大丈夫なわけないか」
「うん。あの、例の話、本当だよね?」
柊くんは嘘なんかつくわけない。
それは小中高大学と一緒に過ごしてきたから分かる。
なんだかんだって私たちは仲が良かったし、彼は私のピンチをよく助けてもくれた。
柊くんと私、お互いに就職して忙しくなって、私のほうが先に結婚してしまったら、ちょっと疎遠になってしまった。
たまにメールや年賀状で生存確認みたいにお互いの近況報告をして。
柊くんは夫の颯斗くんとも交流があって、時々、二人は趣味のフットサル仲間と試合で試合で会っていた。
私が柊くんとは不思議と縁がすっぱり切れることはなく、柊くんが社会人になって始めたフットサルの仲間をまじえて夫の颯斗くんと会ったりしていたので、遠くで彼の活躍とか聞いてる。
今日、高校で入ってた部活の料理部の同窓会があったんだ。
さっきまで料理部のみんなも一緒だった。
私は王子様みたいとモテモテだった柊千秋くんと再会した。
柊くんは、都内に自分の経営する料理教室のキッチンスタジオがあるんだって。
私も夫の颯斗くんとよくテレビで柊くんの姿を見かけてた。
柊くんは動画配信や料理番組に出たりで、ちょっとしたタレント活動で人気を得はじめていたから。
高校の仲が良かった同級生が有名になって活躍している姿を目の当たりにするのは、どこか誇らしくすごく嬉しかった。
久しぶりに再会した柊くんは、すっごくきらきらしてた。
イケメンっぷりに拍車がかかり、眩しくって。
「みんな久しぶり」
料理部の同窓会は高校のそばの喫茶店。
みんなでよく部活帰りにクリームソーダやプリンアラモードを食べたりしたっけ。
貸し切りで同窓会パーティを開くだなんて、当時の私からしたら驚きだろうなあ。
パーティが始まって一時間ぐらいして。
誰かがお店に入ってきたとたん、柊くんだって分かってしまった。
私の席からはドアはちょっと遠いのに、柊くんはイケメンオーラが輝いてて、さらには昔と変わらない声がした。男の人にしてはちょっと高めで甘い優しい声が、耳に心地いいんだよね。
明らかにイケメンでイケボな柊くん。
私の横の席になんのためらいもなく、スマートに座った。
「元気だった? ……唐突だけど。小夏、話があるんだ。黙ってこのメモ読んで」
柊くんの囁く小声は私にしか聞こえていないみたい。
テーブルの下で私はそっと柊くんに紙を手渡された。
「メモ……?」
「しっ、しずかに。ねっ? 同窓会終わったらさ、小夏とちょっと二人で話したい。とりあえずメモ見て」
二人きりの二次会?
私と柊くん、親友みたいに仲が良かったから、静かなところで積もる話でもしたいのかしら?
最初、私はのんきにかまえていた。
だが、柊くんは実はある事実を知っていた。
私の人生を劇的に、いっぺんにどん底な気分に変えてしまうぐらいの――。
信じきっていた夫に、愛している彼に裏切られた結婚生活。
柊くんは、探偵に妻の尾行と素行調査を頼んでいたのだ。
不倫している確信と物証を得た柊くんは、サレ妻になっている私を思い、警告をしてくれた。
【「小夏、君の旦那さんは浮気をしてる。彼の不倫相手は僕の妻だ」】
あっ、万年筆かな? 美しい文字で小さな便箋にひとこと書かれていた。
私はショックすぎて、頭がふわふわクラクラしてきていた。その証拠とばかりに、そのメモ程度の一行の手紙を読んで、なんだか的はずれな感想が頭をめぐっていたの。
もしかして、これは夢?
……そうだ、夢なのかもしれない。
本当は私、同窓会になんか来てないんじゃないかな。
同窓会の和やかな雰囲気にも、柊くんの優しい声音にも似つかわしくないぐらい、とんでもないことが、私の手のひら視線の先に突きつけられていた。
それは夢なんかじゃなくって悲しい事実で衝撃で。
衝撃って言葉も悲しいって言葉も生やさしいぐらい、私の心を粉々に打ち砕いていった。
柊くんから渡された数枚の写真には、私の夫の颯斗くんと柊くんの妻でモデルのカレンさんがホテルに二人で一緒に入り出てくるところが写っている。
私の夫も柊くんの奥さんも顔まではっきりバッチリ写ってて。
否定なんか出来ない。
(ああっ、……颯斗くんが浮気してる!!)
肩を寄せ合い親しげな様子が伝わってきた。
だから、か。
好きな人が出来たんだ。
だから、なんだ。
私を抱かない理由が分かってしまった。
どこか、私は考えないようにしてきたことが、実は潜在意識では感づいていたのかもと気づいた。
私は夫の変化にも愛されていない事実にも気づいていたのに、蓋をして見て見ぬふりをしてきたんだ。
向き合わなくっちゃいけない。
目を背くことが出来ない、無視や知らない振りをして逃げることはやめにしよう。
夫婦で、これからどうするのか。
真剣勝負をする時期が来たんだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。