純愛と傲慢
錦戸かな
第1話
「授業終わったし学食行こ」
「どこの行く?」
「一番近いとこでよくね」
「あり」
こんないつも通りの会話をしながら僕はいつも通り友人の前田優斗と田中努とともに学食へと自転車をこぐ。その間も授業がつまんなかっただの昨日のサークルの話だのといった些細な話をしている。これが大学生活始まっていつも通りの光景だ。
最近では家庭教師のバイトも慣れてきて落ち着き始め、大学の雰囲気にも慣れてきて、あれほど楽しみだった大学生活が退屈なものに思えてきてしまったので、マッチングアプリを始めることにした。そこでマッチした数人と現在連絡を取っているが、その中でも一人まなと呼んでいる愛美という人と特に長く連絡をし続けている。ただ、マッチングアプリをしていると公言をするのは躊躇いがあり、友達たちにも言えないままだ。
そうこうしているうちに全員ご飯を食べ終わり、そのまま今日は家に帰ることとなった。そして家に帰りいつも通りアプリを開くとまなからメッセージが来ていた。
「今日はサークルでご飯食べに行ってた~」
「あの漫画面白いよね」
……
いつも複数の話題について同時に何個もメッセージを送るのが普通になっている。今日何をしたかという他愛もない話や、どうでもいい漫画の話、ふざけた話などほとんどが意味もない連絡がほとんどだ。でもほかの人たちと違ってまなは自分から話題を出したり、変なボケを言ったり、少年漫画の話題についてこれたりと、かなり話しやすい人で好感が持てる。
「楽しそうだね、どこ行ったのー?」
「昔めっちゃはまったなー」
……
こうしていつも通り意味もない会話を続けていく。こんな風に意味のない会話をしているものの、少しずつまなの情報も入ってきている。東京出身で、名門の中高一貫校に通っていたこと、今まで彼氏がいたことがなくそれがコンプレックスなこと、かなり友達が多くていつも遊んでいること、外食が多く一人暮らしだが自炊はほとんどしていないこと、連絡はあまりしないほうだということなど少しずつ個人的なことが分かり始めている。
僕は田舎出身で、中高そして大学と友達が少なく、あまり遊びに行かず、かなり自炊をすることが多いので自分とは全然違う人生を歩んできていてかなり話していて面白い。過去の話などを聞いていても、自分が受験勉強を頑張っていた時期にも遊んでいたという話をしていたり、東京出身なことだったりと、少し自分のコンプレックスが刺激されもやっとすることはあるものの話していて楽しい。
僕はメッセージのやり取りを繰り返しているうちにだんだんと心が惹かれている自分がいるように感じる。
そのあとも他愛もない話をしていてふと時刻を見るとスマホの時計が12:40を指していた。お互いに次の日に1限があったので寝ることにした。最近はいつもこんな感じでお互いに家に帰ってから少しメッセージのやり取りをしてから寝るというのが普段の生活になってきている。
そんな日が続き、まな以外の人と連絡を取らないようになったある日、まなから観光地が集まっている場所に行きたいというメッセージが来ているのが目についた。僕はチャンスだと思い、一緒に行かない?とあくまで自然な形を装ってメッセージを送ってみた。そうすると、
「本気で言ってる?笑」
という冗談と思っているようなメッセージが返ってきた。僕は会ってどんな人か確かめたいと思っていたこともあり、この機会を逃したくないので
「本気だよ、会いたい」
と素直に返してみる。ネットで知り合った人と会うのは初めてなので少し緊張はするが、これだけ話しやすくて話が楽しい人はそうそういないだろうから会ってみたい気持ちが勝っている。女の子のほうが怖いだろうから無理やり会うつもりはないが、向こうにあるつもりがあるのなら会ってみたいと思う。
「じゃあ会ってみるわー」
思ったより素直に会うことが決まった。そのまままなが開いている日に僕は何も予定がなかったので、そのままとんとん拍子に会う約束をこぎつけることに成功した。
「写真とか送ったほうがいい?」
「会うのに特徴が分かったほうが楽だけどどっちでもいいんじゃない?」
「顔見てがっかりされて帰られるとやだから送る」
今までやり取りしてきた中でふとした瞬間にはあらわれていたが、自己評価が引く女の子だと思う。そもそも僕は隣県まで1時間近くかけて会いに行くのだからそんな顔が好みじゃないぐらいで帰るほど楽じゃないということがわからないのだろうか。
「じゃあ僕も送るよ」
そう返して少し写真フォルダをさかのぼってみる。しかし、僕は自分の写真を撮るのが好きじゃない影響で全く自分の写真が見当たらない。仕方がないので当日の服もこみで当日会う前に自分の写真を送る旨を伝える。
「じゃあ私は今送るね」
そう返ってきて何枚か写真が送られてくる。そうして送られた写真を見てみるが、かわいらしい女の子だ。今風というわけではないし、特段目を引く美人というわけではないが愛嬌があり、十分かわいいと呼べる部類に入るだろう。
「え、めっちゃかわいいじゃん、そんなかわいいのに帰るわけないじゃん笑」
少し大げさ目に褒めてみる。そうすると、
「じゃあ会う?」
そう返ってきた。僕は完全に会うつもりになっていたので、
「会いたい、そんなかわいい子とデートできるのうれしいよ」
そんな風に返してみる。僕はまなと違い友達こそほとんどいなかったが、多少恋愛経験があるのでこういったとりつくろえる部分を取り繕っておかないと絶対に勝てないと思ってしまう。所詮僕は田舎出身なのだから、彼氏がいたことないとはいえ東京でいろんな男を見てきて、いろんなところで遊んできている女の子にかなうわけがないのだ。
そんな風に会話をして寝ることになった。
そうしてデートの約束ができた日から何日かが過ぎてデート当日が訪れた。
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