告白詐欺

りつな

第1話 私の恋に爆破は必然?

 なんで多くの恋愛ドラマのラストは少女漫画のような幸せな二人で幕を閉じるのかずっと疑問だった。


 それが当たり前の世の中だからこそAIに聞いてみたい。


 だが私は、ChatGPTにその疑問を聞いたことがない。

 強いて言えば、機械に答えを委ねたことがなかった。スマホの予測変換を無視した時があり、レシピを間違えた肉じゃがみたいな日本語の文章をそのまま送って、「まずい」と言われたこともある。



 そんな私がもしAIならばどんな答えを出すのだろう。


 導き出した答えは「命を終えた恋では視聴者の失恋の傷をえぐるからだ」との一言だ。

 

しかし、リアルの私の恋は鉄板の爛漫ラブソングのような終わり方を知らない。

私の脳には、ぎっしり詰まった揚げ物とご飯だけのお弁当のように彩りを消した恋の記憶がほとんどだった。




 初恋は中学ニ年の春。

 犬みたいな無邪気な笑顔に相まって少年らしさを残したクラスメイトのある男子の話し声を聴いて

 「こんな可愛い声になる声変わりがこの世に存在するんだ!」

と思うくらい感動して、声で一目惚れした。



 それから私は、彼の声が聞きたくて一所懸命話しかけてみた。


 まずは挨拶。朝、誰よりも早く学校に来て、おはようを言い、タイミングを見計らってさりげなく心遣いをする。

 彼が教室を出る前にバイバイを言う。それを続けてまずは『ある程度話すクラスメイト』を心がけた。


 そのカリキュラムを終えると今度は、歌声を聞けるように音楽好きの彼の好きなアーティストや曲を尋ねた。その難題は予想以上にうまくいき、二人でハモるまでの仲になった。


 クリスマスの近い二学期のある日に早まった告白をした。すると彼の答えは、

 「野球の強豪校に入るため受験に専念したいから、付き合うのは無理」

そう言われて「そうですか」と言うしかなかった。それで私の初恋は終わった。

 

 と思ったのに、違った。



 その数日後の放課後。友達の利音(りね)とたわいのない話で盛り上がる通学路の向こう側の歩道に彼はいた。

 

 隣のクラスのアイドル的女子とその彼が楽しそうに話しながら自転車に二人乗りしているのを利音が先に見つけた。茫然としている利音を不思議に思った。しかし、その視線の先を見て真実を私も知ってしまった。


 「あっ!見てはいけないもの見たけど、いつかは詩澄美(しずみ)にバレる。言わなきゃな」

 「何?」

 「あの柴犬は隣のクラスのユメナと付き合ってんの。そして、アイツは一応野球部だけど、弱いから。補欠なのを隠してるの」


 その二言目を聞いた瞬間。腹が立って、そして泣いた。


 その日から、そいつの吠える声を聞くたびに胸の中から何かマグマに近いものが湧き上がるのを感じた。


 くだらなすぎるこの初恋は、阿呆な私が初めて告白詐欺に出遭った事故だった。



したたかに紅葉の日々夏減らす

彼との時間うんめいが爆破

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