恍惚としたウエディング撮影

あかりはほんとうに美しかった。 アカリの顔には若干の心配事が残っていたが、それでもウェディング撮影に行くというときめきのためか嬉しい気持ちがさらに現れ、顔には赤みがかった。

こんなに可愛くて愛らしいあかりがウェディングドレスを着たらどんなに美しいだろうか?

レンはウェディングドレスを着たアカリの姿を想像しながら言った。


「じゃ、出発しよう。」


ウェディングスタジオは家から遠くないところにあったので、すぐに到着した。 あかりはスタジオを見回して言った。


「わあ、きれい! 雰囲気がすごくいい!」


案内を担当したマネージャーたちが近づいて挨拶をした。 そしてアカリを見つめながら言った。


「あら、きれい。 花嫁が本当に若いですね。」


しかし、その言葉にあかりとれんは笑いで答えるだけで、何も言わなかった。 実際アカリは20歳になっていない年齢で、18歳の誕生日を数日後に控えている年齢だったから。


マネージャーの一人がアカリを見ながら再びおしゃべりに話した。


「うちのスタジオにいらっしゃった方の中で 一番若い花嫁だと思います。」


おそらくそれは事実だろう。 女子高生がウエディング撮影に、それも新郎と一緒に来ることは多分ないだろうから。 そして、今レンは28歳の姿なので、マネージャーたちにはおそらくレンとアカリが年の差カップルに見えるしかないだろう。


「髪はどうしますか? ウェーブにしますか? それともストレートにしますか?」


マネージャーが尋ねたが、それはアカリも考えたことがなかった。 あかりは考えているうちにマネージャーに聞いた。


「他の花嫁たちはどうしますか?」

「うーん。花嫁たちはほとんどウェーブでよくやっていますが、最近はストレートヘアでウェディング撮影をする花嫁たちもたまにいらっしゃいます。」


あかりはどうしたらいいかというようにれんを眺めた。 レンは今長いストレートのアカリの姿が本当にきれいに見えた。 しかし、レンは自分でやれというようにうなずいた。


あかりはしばらく考えてからマネージャーに答えた。


「私は今のままにします。」

「じゃ、ストレートにしますか? アップもやめましょうか?」

「はい。今のようにほどいたストレートヘアにしてください。」

「私が見てもよく似合うと思います。 では、私についてきてください。」

レンとアカリはそれぞれ自分のメイクを担当したマネージャーたちに従った。

「ここにお座りになりますか?」


レンは自分を担当したマネージャーについて行き、鏡が見える椅子の前に座った。マネージャーは笑顔で言った。


「花嫁が本当に若くてきれいですね。こんなに清楚な魅力を持った花嫁は初めて見た気がします。」


それはまるでレンに能力があるかのように言っているようだった。


レンは返事の代わりに薄い笑みを浮かべた。 レンはメイクを終えてタキシードを選んだ 。マネージャーがメイクを終えてタキシードを着たレンを見ながら話した。


「花嫁はメイクが長くかかるので、私は花嫁の方に行ってお手伝いします。 ここでちょっと休んでいらっしゃいますか」

「はい。」


30分ほど経った時、レンのメイクを担当していたマネージャーが来てレンに話した。


「花嫁のメイクが終わりました。 撮影しに行きます。」


レンはマネージャーに従った。 ウェディングドレスを着ているアカリがすべての準備を終えてレンを待って立っていた。


レンはあかりの姿を見て口をつぐむことができなかった。 鎖骨と肩が露出していながらも肩と胸のラインをつなぐ紐がシースルーになっていて神秘感を醸し出す純白のウェディングドレスを着ていた。 胸が少し露出していながらも高級なセクシーさが感じられるウェディングドレスだった。


アカリが気を失って自分を眺めているレンの視線を感じながら恥ずかしそうに尋ねた。


「ウェディングドレスを一緒に選びたかったが、これを見た瞬間気に入った。 私が選んだウエディングドレス···…いいのか?」


レンは笑いながら答えた。 まだあかりの美しい姿を見て魂が抜けたようだった。


「うん、まったく…···きれいだよ。」

「気に入ってくれてよかった。 あまりにもやせて見えたり、私には似合わないんじゃない?」

「うーん…···。」

「大丈夫だから言ってみろ。」


アカリが着ているウェディングドレスは肩と鎖骨はすべて露出したが、胸は少し露出している程度なので高級感があってセクシーな感じだった。


「すごくきれい。 あなたに本当によく似合うよ。」

「よかった。」


あかりはそう答えて笑った。 レンは普段からアカリをいつもきれいだと思っていたが、こんなに美しいアカリの姿は想像したことがなかった。


マネージャーは椅子に座っているあかりにベールをかぶせ、ブーケを手に握らせた。

ピンクと白と薄黄色が調和したブーケを手にしていると、アカリの姿はさらに美しく見えた。

その時、カメラマンがカメラを持ってきて挨拶をした。


「こんにちは!今から撮影を進めます。 さあ、新郎はそこの壁の方に立って、両方のポケットに手を入れてください、花嫁は新郎の左肩に右手をのせてください。 そして左手は新郎の左腕の間に腕を組むように入れて、カメラを見てください。 さあ、笑ってください。」


その姿勢でいくつかのカットを撮った後、カメラマンが再び言った。


「いいですよ。 次はこちらに移動して、あそこの絵が見える壁面にあるソファに一緒に座ってみましょう。」


カメラマンが指した側には壁面に洋画のような絵がかかっていて、アンティーク風のソファがあり、その横には大きな花瓶の中に入っているユリの花が高級な雰囲気を醸し出していた。


「そのまま座ってください、お互いに密着してください。」


レンが少し距離を置いて座ると、カメラマンは再び言った。


「距離を置かずに密着してください。 そして、花嫁は右手にブーケを持って膝の上に置き、左手で新郎の右手を握ったままカメラを見てください。」


その姿勢で数カット撮った後、カメラマンが言った。


「今度はその姿勢でお互いに向き合ったまま笑ってください。」

カメラマンは数カット撮ってから言った。

「今度はキスシーンです。」

「え?」


カメラマンの言葉にレンとアカリはお互いの顔を見た。


「こちらへどうぞ。」


カメラマンはレンとアカリに透明な窓ガラスと花飾りが背景にあるところでと言った。


「さあ、自然にキスしてください。」


あかりとれんは途方に暮れてじっとしていた。


「お二人は何をしていますか?」


初めてでもなく、何度もしたキスなのにウェディング撮影するところで他の人が3人も見ているところでしようとすると、なぜかぎこちなかった。


しかし、カメラマンとマネージャーをずっと待たせているわけにはいかなかった。


アカリはレンに早くキスするようにそっと目を閉じた。 レンはアカリに近づき、アカリの唇に自分の唇を合わせた。 あかりはまるで小鳥のようにぶる震えていた。 まるでファーストキスをするように恥ずかしがる姿で、とても可愛く感じられた。 カメラマンが言った。


「そのまま少しだけいてください。」


カメラマンは次々と写真を撮った。


「いいですよ。 席を移してもう一度キスシーンを撮ります!」

「え?」


レンとアカリは同時に言った。


「今度はあそこのカーテンのある方に移動してキスシーンをもう一度撮ってください。」


日差しが染み込んでくる窓の方には白いカーテンがかかっており、アンティークな椅子2つを挟んで真ん中にある細長い花瓶には薄いピンクのバラがいっぱい刺さっていた。


「ここでキスをもう一度します。 さあ、キスしてください。」


アカリが目をつぶると、レンは再びキスをし、カメラマンはその間に数回写真を撮った。 短い瞬間だったが、とても甘く感じた。


「いいですよ。 今度はそこの隣にあるソファに座ってください。 座ったまま新郎が花嫁の手の甲にキスするのです。 新郎は花嫁の手の甲にキスしてください。」


レンはアカリの手の甲にキスをし、カメラマンはその場面を何カットも撮った。


「いいですよ。 また移動します! あそこを見ると、天井に背中がぶら下がっている方がいますよね? そこに白いバラの花がある花瓶の方の壁に立ってください。」


アカリとレンは天井に明るく光る電灯がいくつかついていて、細長い花瓶に白いバラが差し込まれている壁の方に立っていた。


「花嫁が壁の方に立って、新郎は花嫁の左肩に手を置きます。」


レンはあかりの白い肩に手を置いた。 アカリはレンの手が自分の肩に触れると、なぜか震えているように感じられた。


「いいですよ! 次の場所に移動します!」


あかりは自分の顔が赤くなったようだった。 レンの顔をちらりと見ると、レンの顔も赤くなっていた。


2人で一緒にウェディングドレス撮影を終え、アカリ一人で花嫁カットだけで数枚を追加で撮った。 ところが、終わりではなかった。 次はパーティードレスの撮影が残っていた。


マネージャーがあかりとれんを見ながら言った。


「最後にパーティードレスを着て撮影するのですが、ドレス選びに行きます。」

マネージャーはレンを見ながら言った。


「新郎はタキシードをそのまま着ていてもいいので、花嫁がドレス選びを一緒に選んでもいいと思います。」


アカリはレンに近づき、手をつなぎながら言った。


「一緒に選んで。」


アカリはパーティードレスをちらっと見て、どれを選べばいいかわからない様子だった。


「どれがきれい?」

「全部きれいだと思う。 君が気に入ったものを選んで。」


アカリはしばらくあれこれ選び、ピンク色のドレスと黒のドレスを見ながら尋ねた。


「どっちがもっときれい?」


デザインは似ているように見えるが、色だけが違うようだった。 レンは二つを比較して答えた。


「ピンクがあなたによく似合うと思う。」


レンの話を聞いてあかりはピンク色のパーティードレスを選んだ。 濃いピンク色ではなく薄いピンク色だからか、何か高級感があった。


あかりはドレスを選んでレンに言った。


「これ着てくるよ。」


純白のウェディングドレスを着て歩いていくアカリの姿は本当に美しかった。 しかし、写真でもう一度見ることができるだろう。 レンはアカリがパーティードレスを着た姿はどうだろうかと気になりながら待っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る